もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

混ざり合う今昔







待ちに待った男児だ

跡継ぎだ

目出度いこと!宴だ、宴を催そう

やっと産まれたのね、私の弟が







祝福されて産まれたその男児
それは御門家にとって、これ以上ない程の喜び
私は御門の跡継ぎとして、両親や姉、親戚たちに様々な事を教えられ、守られた



今日は星見をしましょう、遥人

ほしみー?

そう、星を見て、未来にどんなことが起こるのか占うのです
遥人、あなたにはなにが見えますか?

うーんとね・・・ははうえ!

あらあら・・・わたくしではなく、星を見るのですよ
さぁ、夜空を見上げてご覧なさい、遥人





けれど無情にもその喜びは、絶望へと様変わりした






きゃあぁああぁぁぁ!!

たすけ・・・!

所々から上がる悲鳴
焼ける家
呆然と立ち尽くす
すべて、私のせい
物の怪は皆私を守った
けれどそれ以外、見向きもしなかった
私の大切な人は、場所は、すべて見捨てられた
焼いて、焼いて、焼いて
そうして残ったのは人の骨と灰
それから、記憶の濁流


「・・・ぁ・・・ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!」


私は誰?私は遥人、昌浩の姉。違う、私は遥人、御門家の長男、跡継ぎ。私は巫女になる。私は陰陽師になるんだ。どうして?だって御門家の長男だから。私は女なのに?私は男に生まれたんだ、女じゃない。いかなきゃ高尾様の場所へ。私は食べられたからもう居ない。じゃあどうして生きてるの。生まれたから。なんで。新しく生を受けて。じゃあどうして私は過去があるの。なんで。
 私 は ど っ ち ?
ざわり、と風が動いた
目に見えない獣が唸る
私に擦り寄る、見えない毛並み
どうして私はここに居るの?





混ざり合う今昔









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