落とし穴に落ちて 「うわぁっ!?」 「ら、雷蔵っ!?」 隣を歩いていた雷蔵がいきなり消えた と、思ったら、落とし穴に引っかかったらしく、隣がぼっこりと穴が開いていた その中で、いてて・・・と打ち付けたらしい腰をさする雷蔵が見える 「大丈夫か?」 「うん・・・それにしてもこんなところに・・・」 手を差し出して、引っ張りあげれば制服に土がついて居たので、払ってやる まだ痛いのか、腰をさすったままだけれど、雷蔵は困惑気味に穴を見た 私はしゃがむと、雷蔵の落ちた穴を観察する 「よく出来た穴だな、上級生か?」 「うーん・・・でもほら、最近穴掘り小僧が一年生にいるって噂聞いたから・・・でもこれだけよくできてるってことは上級生・・・?でもでも、上級生だったらこんなところに掘るのかな・・・?」 「どっちにしろ、よくで着た罠って事でいいだろ」 悩み始めてしまった雷蔵に、私は軽く声をかけると、雷蔵はそれもそうだね、と同じように軽く返して、悩むのをやめた そうでもしないと、ずっと悩み続けるのは、付き合い始めてから1年以上たつ今では何度も経験済みだ 「あれ・・・三郎、雷蔵、どうした?」 少しはなれた廊下の向こうから、遥人が話しかけてきた 手招きして呼ぶので、私は雷蔵と一緒に廊下に近寄る その途中で、遥人があ、と声を上げたので、私たちは揃って首をかしげた 「そこ、落とし穴、後そっちもだから、落ちないように気をつけろ」 「え、そうなの?」 「・・・本当だ」 遥人に言われてよく見ると、示された二つの場所は、双方とも分かりにくいがサインがあった ここまで分かりにくいとなると、やっぱり上級生の掘った落とし穴なのだろうか? とりあえず、雷蔵と私が落とし穴を避けて近寄れば、懐から紙切れを取り出した遥人は、その紙切れにふっと一つ息を吹きかける すると、紙切れが雷蔵の周りをくるりと一周して、遥人の手の中に戻った 「遥人、今のなに?」 「説明するとちょっと難しいんだけどな・・・術の一種だよ」 「・・・遥人は陰陽師ってヤツか?」 綺麗になった雷蔵が遥人に質問すれば、遥人は少しだけ苦笑して一言答えた 私が名称を遥人に聞けば、よく知っているね、といってくしゃりと頭を撫でられた それがなんだか嬉しくて、私は笑みを浮かべる 「私はね、元々陰陽師の家柄の端くれだったんだよ。家はなくなってしまったけれどね」 だから私も陰陽師の端くれなんだと話す遥人の顔はなんだか笑っているのに笑っていないように見えて そう思ったのは私が変化をする人間だからなのかもしれないけど 私は廊下に上がると、遥人の頭を撫でた 遥人は少し驚いたように三郎?と私の名前を呼ぶ 「私が撫でたかっただけだ」 「・・・そうか、ありがとう、三郎」 一瞬だけ、驚いた顔をした遥人だったけれど、すぐにうっすらと笑みを浮かべてそういった 雷蔵はちょっとだけ分からないようだったけれど、私と遥人の様子を見て、僕も!というと、廊下に上がって遥人に抱きついた ぎゅうぎゅうと手加減なさそうに抱きつく雷蔵に、遥人は少しだけ痛そうだったけれど、ありがとうと笑った 「そういえば、雷蔵が落ちた落とし穴は一年生のものだよ」 雷蔵と一緒にくっついた遥人が、楽しそうにそういったときの雷蔵は、年下の子なのに・・・とちょっとだけ落ち込んでいた ・・・遥人、ちょっとだけ性格悪くなった気がする 落とし穴に落ちて → 戻 |