もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

勉強会







「おーい、遥人」
「うん?」


片手を挙げてこちらに歩いてきたのは、一年の最後に衝突した彼
今日出た課題を手にこちらに歩いてくる
あの日をきっかけに私を含め、い組の仲は悪いものではなくなったので、彼らも私に分からない所を聞きに来たりする事も多くなったのだ


「あぁ、今日の課題か」
「ああ、ここが分からなくてさ、良ければ教えてもらっても言いか?」
「構わない・・・教室のほうがいいか」


きっと何人かで集まってやっているのだろうと検討をつけた私がそう提案すれば、そのほうが助かる、と言われたので、兵助と勘も誘って行くことにした






「兵助、勘・・・あぁ、二人とも課題中だったか」
「どうかしたのか?」
「オレがわかんないからって、今教室に居るやつらと一緒に勉強教えてもらいたいって遥人に言ったんだ」


兵助と勘の部屋を訪れれば、二人とも今日出た課題をやっていて
いきなり尋ねてきた私に、首をかしげて聞いてきた兵助に、後ろからひょこりと頼んできた彼が顔を覗かせて答えた
兵助と勘は、二人で顔を見合わせると、文机の上を片付けてまとめ始めた
その様子を見て後ろに居た彼は、先に行ってるな、と一言行って先に歩き出した
私はあぁ、と返事をしてから、兵助と勘の片付けを手伝い始める
といっても、あまりやることはなかったけれど


「手伝ってくれてありがとう、遥人」
「遥人のおかげで早く終わったね、行こうか」
「あぁ、そうだな」


それでも感謝の気持ちを言ってくれる二人に、私は優しい二人だと思いながら、頷いてそう返す
そして連れ立って、い組の教室へ向かった






「お、来た来た」
「おせーぞー、三人とも」


教室について、顔を覗かせれば、笑顔で声をかけてくる級友
私はすまないなと答えながら、示された場所に座った
兵助と勘も、共に私の近くに座る


「よし、んじゃこれなんだけどな」
「早速だな・・・。これはここの応用だ、少し頁が飛んでいるが、数頁戻っただけのものと似ているから、引っ掛けになっている」


算術の問題のようだ
先生も少し意地悪で、似た問題なのに違う式を使わねば解けないものを出してきている
級友の多くもそこに気がつかなかったらしく、あぁ、と納得していた
兵助がとんとんと私を叩いて呼ぶ


「遥人、こっちは?」
「・・・あぁ、これはここの頁に乗っている、少し説明のしかたが違うけれどね、これの事を指しているんだ。よく読んでみると、ただ言い換えているだけだって分かるだろう?」


聞かれた問題は、問題文を呼んでなにを指しているのか書くというもので
こちらも忍たまの友にかいてある文章とは表記を別なものにしている
しかし言い方が変わっただけで、実際に言っていることは同じなのだ
兵助はその問題文と忍たまの友を読み比べると、あ、ホントだと声を上げた
その後もいくつかの質問に答えていると、先生が来た


「お?みんなで集まって勉強会か?」
「はい、広いところがここくらいしかなかったので」
「それはいいが、そろそろ暗くなるから、まだやるなら明かりをつけなさい」


先生の忠告に、外を見れば大分日が落ちてきていることに気がつく
誘ってきた彼もそれを見て、今日は終わるか、と声をかけた
私もそれに頷く


「まだわからないところがあれば、直接部屋を訪ねてきてくれ、多分居ると思うから」
「おー、分かった」
「ありがとなー、御門」


ぱらぱらとお礼を言われて、私はどういたしましてと返せば、勉強で集まっていた彼らは持っていた忍たまの友と筆記用具を片付けて、教室を去っていった
私も兵助と勘の片付けを手伝ってから、それを置いたら三郎や雷蔵、ハチを誘って食堂に行くか、と笑みを浮かべた




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