もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

親愛?友愛?







忍術学園に予定よりも少し遅いけれど無事着いて、綾部は半助さんに任せることにした
一生徒、それも二年生で去年まで一年生だった人物が何かすることではないし、新入生の入学手続きは事務だ
半助さんも、はやく制服に着替えてきなさいといっていたし、ここはお言葉に甘えさせてもらうのが得策と判断したが故というのもある
そうして新しい制服を貰い、自分の部屋を探せば、掛かっていた名札は私一人で
人数の関係上一人なのは仕方がないし、使役妖怪が居たりすることから一人部屋であるのは確かに都合がいいのだけれど、やっぱり同室が居ないというのは部屋ががらんとして寂しいと感じることも、たまにある
そういう時は、決まって兵助や勘だけではなく、三郎や雷蔵、ハチも遊びに来てくれるのだけれど


『今年も遥人一人部屋だね。広々ー』
「まあ、お前達が居るからな、都合がいいといえば都合がいいよ」
『・・・私も入っているの?』
「ずっと綾部についているわけにもいかないだろう」


むっすーとしている由に、蓮がまったくーと兄らしい顔を見せる
いつもの元気な蓮ばかりを見ている私にとっては、少々不思議なものだ
私はその様子を見ながら苦笑すると、制服に着替えて、2匹に少し出てくると伝えると、兵助と勘の元へ向かった




隣の部屋の名札を見れば、すぐに見つかった久々知兵助と尾浜勘右衛門の文字
中に気配も感じることから、既に来ているようだ
まあ、私も少し来るのが遅れたから、遅いほうだったんだろう
私は中に声をかけた


「兵助、勘」
「あ、遥人!」


すぐに顔を出した兵助ががばりと私に抱きついたので、とっさに踏ん張って倒れないようにする
危ういところだったが、新学期早々に医務室にこんにちはは免れることが出来た
兵助の後ろから勘が顔を出して苦笑を浮かべた


「兵助、それは遥人が危ないよ」
「あ・・・ごめん・・・」


勘に言われてしゅんと肩を落とした兵助に、私はぽすぽすと頭を撫でると、大丈夫だと返した
実際、もう少しすれば兵助に勢い良く抱きつかれても問題なくなることだろう
日々鍛錬は欠かしていないし
忍者たるもの日々鍛錬というのもあるけれど、陰陽道に連なる者として、精神を鍛えるためには体も鍛えた方がよいと、父上が言っていたのを思い出したのもある
それに、半助さんのところに居るわけだから、教えてもらおうと思えば教えてもらえる環境にいるのだ

そんなことを思いながら、なおも抱きついたままの兵助に、苦笑しながらも、私は止めなかった
それに機嫌をよくしたのか、兵助がふにゃりと笑った


「遥人、落ち着く・・・」
「あ、それは分かる。なんかお兄ちゃんみたいだよね、遥人」
「同い年だろう、二人とも・・・でもありがとう、兵助、勘」


くすりと笑えば、勘が驚いたように眼を丸くして
兵助もぱちぱちと瞬きを繰り返した


「遥人、笑った顔は可愛いね」
「普段は綺麗って感じなのに・・・」
「・・・そう、なのか?」


あまり自分がどのように見えているかというのは気にしていないため、そっちのほうに疎い私には分からないが
・・・兵助と勘がそういうと言うことは、そうなんだろうか


「でも、私は私だ。容姿がどんなものであろうとね」
「ん、確かに。遥人はやっぱりそういう性格だからこそだよな」
「あぁ、うん。なんだかんだ助けてくれる遥人が好きだよ」


にこにこと笑う二人に、ありがとうと言えば、自然と頬が緩むのが分かった




親愛?友愛?







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