もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

一年生の終わり







教員がいなくなった昼食時
私は先ほどの同級生を引き止めた
彼はむすっとしてあまり機嫌がよくなさそうだ


「なんだよ」
「私も兵助も勘も、天才ではないよ、秀才は天才に勝るのだから。私たちも努力はしている。それが君にとって努力していないように見えるのならば、君は上辺だけしか見れないということだ」
「っなんだよそれ、俺のこと馬鹿にしてんのか!」


私はがっと彼に胸のあわせを掴まれる
無表情のままに、私は首を少し傾げる


「馬鹿にしているわけではないけれど、白鳥が優雅に泳ぐ水の下で必死に水をかくように、私たちも平然としているその下での努力は惜しんでいないということさ」


それだけ分かって欲しい、私も兵助も勘も、天才ではないのだということを
私がそういえば、唇を噛む彼
心の中では分かっているのだ、彼も
私はくしゃりと彼の頭を撫でた


「分からないなら教えよう、こうして縁あって同じ場所で学ぶんだ。どうせならば全員で、6年生まで行きたいだろう?」


い組はみんな、極めることのできる何かがあるのだから
すべてこなそうとしなくて良い、それは大変なだけだ
遥か昔の弟は、一人で抱えて、つぶされそうになっていた
姉であった私は、それを見る事しか出来ず、歯がゆい思いをしていた
だから、今生では、そうならないようになって欲しいと、そう思うのだ


「・・・悪かった」
「分かってくれればいい。2年でも、また宜しく頼む」


あわせを掴む手の力が緩んで、彼は小さく謝った
そして彼が去っていくのを見てから、私は勘と兵助を振り返る


「ごめんな、多分二人が思ってのと違うだろう」
「遥人は僕らがまるで努力して無いみたいって言われたのが嫌だったんでしょ?」
「俺達も、遥人が努力してないみたいに言われたのが嫌だったんだ」


だから、違わないとそういった二人に、私はそうか、ならよかったと返して、ろ組に行こうかと誘った
きっとそろそろ終りそうな気がするから、すぐにばたばたと出てくるだろう
雷蔵だけは違うかもしれないけれど

そう思っているうちに、がたがたと音がして、終わったのだと感じさせた


「あ、終わったみたいだね」
「急ごうか、慌てるハチが廊下で転びそうだ」
「それハチに言ったらきっと怒るだろうな」


くすくすと笑いながら、私たちはそろってい組の教室を後にした





これで一年が終わる
一つ、二つ、重ね行く年の、最初の一つ
これから起こる様々なことの
始めの一歩の、年




一年生の終わり





二年生へ

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