もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

ある日の夕食前








私は医務室で当番の飯塚先輩が作る新しい薬を作る様子を横から見ながら、作り方や効果を教えてもらっていた


「遥人ー、昨日作った薬、運んでくれるー?」
「はい、これ痛み止めですよね?」
「うんうん、二段目の一番左ねー」


丸薬にした色や匂いで、最近はわかるようになってきた
それでも、まだまだ先輩には及ばないけれど


「最近遥人も薬がわかるようになってきたねー」


うんうん、いいことだー、とにこにこ笑う飯塚先輩に、私はこてんと首をかしげる


「流石にそろそろ保健委員になってから1年経ちますから、分からないほうが流石に・・・」
「うーん、それもそっかぁ・・・」


飯塚先輩も、こてんと頭を傾げて、でも、僕覚えたのって2年に上がってからなんだよねーとこぼした
その言葉に、私は少なからず驚いた
だって薬にとても精通していて、篠原先輩と良く新しい薬を作っているのに
私のその思考が顔に出ていたのか、飯塚先輩はけらけらと笑った


「以外?」
「はい、凄く」


こくりと頷いて、そういった私の返答に、飯塚先輩は笑ってそっかーと言うだけだった




しばらくして、カーンと夕食を知らせるヘムヘムの鐘が響いた
飯塚先輩は乳鉢を片付けると、私に行こうかーと声をかけた
私ははいと返して、立ち上がる
新野先輩に挨拶をしてから、飯塚先輩の手を掴むと、並んで医務室を後にした


「遥人、今日はご飯、一人ー?」
「うーん・・・特に約束はしていませんが、食堂に行ったら呼ばれるかもしれません」
「そっかー、もし誰もいなかったら、一緒に食べるー?」


私はひとつ、ぱちりと瞬きをした
珍しい
上級生の先輩が誘ってくることなんてこの一年殆ど無かったし、ましてや飯塚先輩からなんて珍しいというか、むしろ初めてかもしれない
私は少し口元を緩めた


「はい、是非」


そう答えれば、飯塚先輩は満足そうに、じゃあ急ごうかー、定食のために!とどこか気の抜けた声で言った
そうして廊下を歩いていれば、前に見知った後ろ姿


「あ、伊作ー?」


飯塚先輩が声をかければ、振り向く青の制服
伊作先輩は、こちらを見て、笑顔を見せた


「飯塚先輩、遥人くん、二人ともこれから夕食ですか?」
「うんー、伊作も一緒にどう?」
「わ、じゃあお邪魔します!丁度留さんが遅くなるって言ってたので、一人だったんです」


ほわほわと飯塚先輩と伊作先輩が会話する
そして伊作先輩もともに食事をすることが決まると、私は伊作先輩の手を握った
右に飯塚先輩、左に伊作先輩
・・・なんだか第三者から見たら、仲の良い兄弟に見えてそうだなと思った



ある日の夕食前








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