もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

食べ損ねた夕食は







三郎については一応、一段落したのだが・・・
どうやら、兵助が機嫌を悪くしてしまったらしい


「兵助」
「・・・・・・」
「黙っていたら、私は分からないよ」


むっすーとした顔で、私のほうをじっと見つめる兵助
勘に助けを求めれば、苦笑を返された
どうやら彼はどうにも出来ないらしい、困ったな・・・


「兵助」
「・・・・・・だって、俺のほうが先に仲良くなったのに・・・」


その一言に、嫉妬か私の中で答えが出た
なんだかまるで私には弟が二人できたようだな・・・
私は兵助の言葉に苦笑を浮かべて、ぽすぽすと私の横を叩いた


「兵助、おいで」


呼べばこちらに寄ってきて、ちょこりと示した場所に座る兵助
身体には三郎がくっついたままだけれど、手は空いているからと兵助の頭をくしゃりと撫でる
まあ、身長が同じくらいだから、兄が弟を撫でる図にはならないんだけど


「兵助と私は友達、三郎と私も友達、勘と私も友達、三郎と、兵助は?」


私がそういうと、示したいことがわかったのか、兵助は少し考えるそぶりを見せた


「・・・・・・俺は仲良くしても、いいよ」
「あ、おれもー」
「友達になってくれるのか・・・?」


私にしがみついたままだけれど、三郎はそういった
勘がにこにこと頷いて、兵助も小さくだけれど頷いたのを見て、三郎の雰囲気がやわらかくなる


『友達が増えたみたいで、この調子で増えるといいんだけど』
『それにしても雰囲気だけ見てると友達というよりは手のかかる弟だぞ』
『・・・それは同意ー・・・』


部屋の隅で話す蓮と藍の言葉はばっちりと聞こえ、後で文句だな、と心の中で呟いた
と、そのとき、ぐぅっとお腹のなる音がした
音のしたほうを見れば、勘が少し顔を赤くした


「あははー・・・」
「夕食は・・・今からじゃ望めないかも・・・」
「豆腐食べたかった・・・」


三者三様の肩の落とし方に、私は苦笑する
とりあえず3人に、行くだけ行ってみようと声をかけて私たちは食堂に向かった







食堂に着けば、既に片づけをしているおばちゃんがいて、3人は肩を落とした
私はおばちゃんに向かって声をかける


「おばちゃん、夕ご飯余ってませんか?」
「おや、仲直りできたのかい?」
「はい、それで、ごはんを食べ損ねてしまったので、何かあればと」


おばちゃんは顔に手を当てて、夕ご飯はもう残ってないのよ、ごめんなさいねと言った
私は少し考えてから、それじゃあと声を上げる


「何か余っていて使っても良い食材ってありますか」
「え?そうねぇ・・・炊いたご飯が少し残っていて、きのこが少しだけ余ってるから、使い方に困っていたのはあるけれど・・・」


どうするの?というおばちゃんに、厨房を少し使わせてもらえませんかと交渉する
無論、片付けはすると付け足して
その言葉に、おばちゃんは少し考えてから、調味料も使って構わないとつけて心よく貸してくれた


「遥人、ご飯作れるの?」
「来る前は土井先生に引き取られたけれど、ほぼ一人暮らしに近かったからね」


少し待っててと座らせて、私は厨房に入った
余っていたご飯をおにぎりにしてから焼いてしょうゆをかけ、香ばしく
きのこは食べやすい大きさに切ってから、鍋に入れて味噌をといて味噌汁にする
半丁だけ残っていた豆腐があったので、おばちゃんに聞くと使っても構わないといわれたので、それも味噌汁に入れて、沸騰しないようにひと煮立ちさせる
それだけで、焼きおにぎりと味噌汁の、簡単な夕食が完成だ


「出来たよ、三人とも」


そういって持っていくと、3人は待ちきれないとばかりに表情を明るくした
三人が食べ始めるのを見ると、私は一度厨房に戻って自分の分を盛ると、使った鍋等を洗い、自身の夕食を持って、3人が座る席へ向かった






食べ損ねた夕食は









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