もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

朝食のお話







「おはよう、遥人っ」
「おはよー、遥人」


声をかけられて、振り返れば、まだ夜着姿の兵助と勘が立っていた
私はおはよう、二人とも、と返した


「遥人は早いな」
「いつも僕らが起きる頃には用意終ってるよね」
「言われてみると・・・」


いつも合う時間を考えると、確かに朝兵助と勘に会うのは着替えて、朝の精神統一を終えた後だ
精神統一は四半刻程やっているし、それを考えると早いんだろう
兵助と勘は遅いわけじゃないし、むしろ組の中でも早い部類に入るのだから


『遥人、お友達とご飯食べてみたら?学園に着てからもずっと一人だし』


後ろについていた蓮がそういった
別に遅いわけじゃないし、待っていても全然構わない
それに、誰かと食べるなんて、きっと半助さんに拾われてすぐ以来だ


「兵助、勘」
「ん?」「どうしたの?」
「一緒に、朝ご飯食べてもいい?」


私がそう聞くと、二人はすぐにもちろん、と笑った





―――――




「・・・ぁ」


来た
最近、私と同じように、ずっと一人で居る、い組の一年生
御門遥人という名前らしいって、噂で聞いた
いつでも一人でこなして、私と同じ
私と彼は仲間なのだと、心のどこかで思っていた

けれど、今日はどこか違う雰囲気
その理由は、程なくして分かった


「遥人!」
「待たせたよね、ごめんね、遥人」
「気にしていないし、誘ったのは私だから、気にしないでくれ」


雰囲気がどことなくやわらかくて、彼に友達が居たのだというのが分かる
けれど、私にとってそれはとても衝撃的で
仲間だと思ってたのに、裏切られた
仲のよさそうな彼らの姿に、私はぎゅっとこぶしを握った






―――――






「遥人、それだけ?」
「少なくないか?」
「朝はあまり食べれないんだ、だからいつもこれくらいだよ」


朝食を持って席に着くと、二人から心配そうな声が上がった
蓮が大きく頷いているのも見える
どうやら私が食べる量が少ないと蓮も思っているらしい


「私にとっては普通なんだけどな・・・」
「それでも遥人は食べなさすぎだって」


勘が遥人って変なところで自分に頓着ないなぁ、と苦笑した
兵助も確かにと同意している
とりあえず、ここに私の味方はいないようだ


「・・・わかった、これからはもう少しがんばって食べるよ」
「是非そうしてくれ、俺達が気にするから」


兵助はそういうと、そろそろ行かないといけないかな、と残りを片付け始める
私と勘もそれに習うと、三人で教室に向かった





朝食のお話









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