もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

保健=不運?







保健委員会は私も含めて5人らしい
私が来て、全員揃ったと深緑の制服の先輩が言ったからだ


「さて、自己紹介をしようか。俺は篠原豪太、6年ろ組で委員長をしているんだ。よろしくな」
「次は僕!僕は飯塚兼次、5年は組なんだ、よろしくー」
「あ、次は俺か。俺夏目団吉、3年い組で、い組仲間だな、よろしく」
「僕は知り合いだからいらないかもしれないけど、善法寺伊作、2年は組だよ」


次々と自己紹介をされて、私は名前と顔を一致させるために口のなかで呟く
そして、覚えると、自己紹介をすべく顔を上げた


「私は御門遥人、1年い組です。よろしくお願いします、先輩方」


そう言って、丁寧にお辞儀した




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迎えに行ったときから、その雰囲気は他と違っていた
教室に一人ぽつんと残っていた御門は、ただ背筋を伸ばして窓の外を見ていた
普通なら、きっと一人残って寂しいだとか、つまらないだとか、そういう感情が出ているはずなのに
御門にはそれがなくて、むしろそこだけ空間が違うかのようだった
きっと御門自身が俺に気がつかなかったら、俺は御門を医務室に連れて行くのがもっと遅くなったかもしれない
それくらいに、御門の居た場所だけが違ったのだ

その"違い"は道中でも発揮された
俺はい組であっても保健委員で、不運委員の異名をとる委員らしく不運だ
だから塹壕があれば落ちるし、罠があれば引っかかる
御門を医務室に連れて行くまでに、いくつかの罠にも引っかかったわけだし
・・・でも、よく考えたら御門は一度も罠にはまっていない
い組だからって不運が無いわけじゃないから、"保健委員"であるならば、御門だって不運委員の・・・はずなのに

その不思議な雰囲気は医務室でも発揮して
善法寺と知り合いだった御門
善法寺は俺達不運委員の中でも不運ランキングナンバーワンを誇り、外に出せば必ず罠に引っかかり、ごろつきに襲われ、と言った被害にあうのだ
そういえば、今年は一応遅くはあったが新学期に間に合ったと、同室の食満が言っていた
来るときに会ったといっていたし、御門は不運どころか幸運の持ち主で、善法寺の不運を打ち消しあっているということなんだろうか・・・?
俺はそんなことを考えながら、善法寺と話す御門を見ていた





―――――




見られてるなぁ、と感じたのは蓮や藍が言ったのもあるし、ずっと視線を感じるのも確か
御門の職業柄そういったことには敏感だから、気がつきやすいというのはある
普通の1年生なら、多分気がつかないだろうくらいの視線だから
でも、普通上級生が避けられない罠を1年生が避けられるなんてこと無いだろうから、そういう意味では正常な視線なんだろう
しばらくは続くんだろうなぁと思いながら、私は先輩方の説明を聞いていた





保健=不運?








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