もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

保健委員会の先輩








兵助が友達になってくれた
勘と兵助はとても優しくて、私なんかを気にかけてくれる


『よかったね、遥人』


にこにこと笑う蓮も、心なしか表情の柔らかい藍も、共通するのは嬉しそうだという感情だった






放課後
委員会活動の時間というものを、今日はどこも行うらしい
勘も兵助も、同じ委員会の先輩に連れられていった
私の担当になった先輩は迎えに来るのが遅く、教室から私以外の最後の一人が出て行くときになって1年い組の教室に顔を出した


「えーと、君が保健委員の子?」
「はい」
「・・・今までに無い子だねー」


苦笑する先輩に、私はひそかに首を傾げるものの、気にすることもでないかと気を取り直す
先輩の雰囲気からして、きっと大らかで優しい気性の生徒がなる委員会なのだろう
私は自分で無表情であることは理解しているし、大らかで優しいわけでもなんでもない
それゆえの先ほどの言葉だったのだと自己解釈した

私は先輩に手を引かれて、医務室へ歩き出した






『あ、遥人、そこの板なにか仕掛けてあるよ』
「わっ!」
『遥人、一時停止だ、そこを通ると上からなにか落ちてくる仕掛けになっている』
「痛・・・っ」


・・・なんだろうか、この罠の数・・・これは普通なんだろうか・・・?
医務室までの道中、私は先輩に手を引かれて歩いていたのだが、蓮と藍が離して歩いたほうがいいというから、大丈夫だと言って離した後、先輩がものすごい可愛そうなことになった
なぜなら、蓮と藍が危ないと言った場所を踏んだり通ったりしてことごとく罠に引っかかっていくのだ
私は蓮と藍が注意してくれるから未だ引っかかっていないが



「あの、大丈夫ですか」
「ご、ごめんな・・・」


上から落ちてきた金ダライの当たった頭をさすりながら、先輩が謝った
私は平気ですと言って先輩の頭をさする
そのときに口の中で小さく呪をとなえる
一時的にではあるけれど、これで多分、少しは罠も回避できると思う
その後は順調に行き、医務室につくことが出来た
何故だか先輩が感動していたけれど

すっと戸を引いて、先輩が中に入る


「一年生、連れてきたぞー」
「あ、遥人!」
「伊作、知り合いか?」


中に入れば見知った姿が私の名前を呼んだ
その様子に、上級生の先輩が不思議そうに言った
伊作先輩は嬉しそうに忍術学園に来るときに会ったのだと話した
そして私が来てくれて嬉しいとも


「遥人、来てくれてありがとう、これからよろしくね!」
「はい・・・よろしくお願いします、伊作先輩」


にこにこと笑う伊作先輩に、私も笑みを浮かべて
後ろのほうで今年の一、二年生は仲が良くて今後も安泰だなーと笑う先輩の姿が見えた





保健委員会の先輩








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