もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

委員会決め








忍術学園に入学してから、1週間
未だ私の友達らしい友達は勘だけだった
けれど、勘も私ばかりを気にしているわけにも行かず
彼自身の性格で交友関係の広い勘は、特に同室の久々知と仲が良かった
私はといえば、幼い頃から大人に囲まれ、家族を亡くして行き着いた先は半助さんの下
半助さんも、忙しい身であったため、私は近隣の人と交流を持っていたが、それも大人の人ばかりで
正直、同い年にどう接していいか、という根本的な部分が理解できていなかった
長屋の子どもは同い年といっても、文字を教えたり計算を教えたり、私が先生のような立場であったし
そういう意味では、人付き合いの出来ない子どもだったのだ


『遥人、友達できないねー』


困った顔で私を覗き込んで言った蓮に、私は小さく頷いた
それも私が無表情で、口数が少なくて、一人部屋だからなのかもしれない
けれど無表情なのはいまさら直しようもないし、口数が少ないのは話す人間が居なくて
話し相手になる蓮や藍と話せば見えない彼らにとって、本当の未知なる存在となってしまうことが分かっているからだ
自分のダメなところが分かっているというのに、それを直すことも出来ない自分の不甲斐なさにため息をついた




そんな日々を送っているある日
そろそろ委員会決めをと先生に言われて、委員会を決めることになった
勘はその気性から、学級委員長になった
私もとても勘にあった委員会だとおもうし、仲の良い友達の多い勘だったらこの組をまとめることが出来るだろう
なんたって、私とすらも話すことが出来るのだから
私はどうしようかと悩んだ
誰かと共に委員会をしなければならないというのは、人数的にあるだろう
それでも、重複しない委員会もあるようだけれど
きっと私と同じ委員会だなんて、相手がいい顔をしないだろうな
ぼうっと黒板に書かれた委員会を眺めて、ふと聞いたことのある委員会の名前を見つけた


『僕保健委員なんだ、だから、もし良かったらきてね!』


あぁ、そうだ、伊作先輩が保健委員だといっていたっけ
人数を見れば、保健委員は一人だけの枠
なら、きっと同じ組の人たちに迷惑はかけないだろう


「保健委員、やりたいひとー」


丁度、学級委員長の勘がそう聞いた
すっと私は手を上げる
勘は大きな目をぱちくりと瞬きして、少しだけ驚いたような表情をした


「えっと・・・保健委員でいいの?遥人」
「ダメだったら、はじめから手は上げないよ、勘」


私は勘に、暗に気にするなと含めてそういった
勘はそう?と一言言って、私の名前を保健委員と書かれた文字の下に書いた
伊作先輩は居るのだろうか?
未だこの制服に身を包むようになってから顔をあわせていない、一つ年上の先輩を思い出して、私は少しだけ委員会が楽しみになった




委員会決め








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