もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

道中に危険は付き物?








今の町に引っ越してきて、半助さんが学園に勤めるようになってから1年
私も、忍術学園に入学することになった
大家さんには、寮制の学校に行くことになったと伝えた
そうじゃないと、何ヶ月もの間家を空けていられないと思ったからだ


「寂しくなるわね」
「本当に、遥人くん良い子だもの、うちの息子にも見習わせたいわ」
「遥人くんはこんなに良い子なのに、半助さんは町内会の溝掃除にも参加しないしねぇ」


生活を助けてくれた近所のおばさんたちに言ったら、そう言って別れを惜しんでくれた
・・・それにしても半助さん、酷い言われようだ
私はお世話になった人に挨拶をして、学園に向かった





―――――





「何をそわそわしてるんですか、土井先生」
「あ、いや・・・」
「遥人くんなら大丈夫ですよ、しっかりした子でしょう」


そうなんですけど、と漏らすが、心配なものは心配なのだ
遥人は見た目が細くて、顔も男らしいよりは綺麗という感じだし・・・
世渡りはうまくはあるが、身を守る術は私が少ない時間で教えたものしか知らないのだ
心配にもなる


「全く、そこまで気にするなら迎えに行けば良かったじゃないですか」
「そうしようかとも思ったんですが・・・」


長屋のおばちゃんたちが頭をよぎる
彼女らは私が町内会の集まりに参加しないのが気に入らないらしく、帰る度に何かしら言われるのだ
それも私がわるいから仕方がないんだが・・・
そう山田先生に話せば、呆れ顔をされた
人からみたらそんなことと思われるが、私にとっては違うんだ
私はため息をついた





―――――




どうしようか
一言で言えばそれに尽きる
忍術学園に向かっていたのはいい
でも、その途中で徒党を組んだ男たちが立ちふさがったのだ
・・・物取りだろうか?


「一人かい?」
「今のご時世一人は危ない、おじちゃんたちが一緒について行ってあげよう」
「あいにくと間に合ってます。他をどうぞ」


いかにも普通じゃない文句に、にやにやとした笑い方
時代が変わってもこういう輩は減らないらしい


「そう言わずに、ナァ、お嬢ちゃん」
「お前たちの目は節穴なんだな・・・私は男だ」


お嬢ちゃんと言われたので性別を訂正する
まぁ、本来そんな事せずとも良いんだけど


「女じゃなかったのかい、それにしちゃ綺麗な顔してるねぇ」
『遥人、後ろにいるよ』


どうやら囲まれたらしい
・・・また面倒な
そして草村に殺そうとして殺し切れていない子供の気配が一つ
・・・迂闊に出てこなければいいけど
その思いもむなしく、私の前に出てきた、年齢のそう変わらない子ども


「ひ、一人に対して沢山は卑怯だっ」
『・・・正義感の強い子どもだな』
『共感は持てるけど・・・ちょっと戦力としては不足じゃないかなー』


助けてくれようとした子どもに対して痛烈な評価だなと私は思いつつ、半助さんと一緒に住むようになってから教えられた体術の型を取る


「助けてくれようとしてくれてありがとう」
「えっ、あ、どういたしまし「でも」て・・・?」


この人数に対して、子ども一人で出てくるよりも、大人を呼んできてもらったほうが良かったかな
そういって私は襲ってきた男を投げ飛ばした





道中に危険は付き物?








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