もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ








「兄上・・・兄上っ」
「相変わらずの泣き虫さんですね、三郎」


ボロボロと涙を流して、私の服に顔を押しつけてける
そんな三郎を可愛いと思う私は相当なブラコンだ、自覚はある
三郎が、鉢屋の家が嫌だと言えば、きっと私は三郎をつれでどこかに姿を眩ますだろう
優しい子だから、そんなこと望んでいないだろうけど


「兄上・・・二葉兄上、ずっと会いたかった・・・!」
「三郎・・・貴方をおいてふらりと姿を消したこの兄を、許してくれるのですか?」


私がそういうと、三郎はばっと顔を上げて、許すだなんて!と声を上げた


「二葉兄上の事を最初から恨んだりなどしてません!だから許すこともないです」
「三郎・・・」


私は嬉しくて嬉しくて、三郎を抱きしめた
いつのまにかあんなに小さかった三郎は、こんなに立派になっていたのだな・・・




―――――
side:雷蔵




三郎が走っていって、僕は呆気にとられた
だって、あの三郎が、焦ったような顔で、いきなり走っていったんだから
僕は少し迷ったものの、三郎を追いかけることにした



学園長の庵に近づけば、聞こえてくる話し声

「兄上・・・二葉兄上、ずっと会いたかった・・・!」
「三郎・・・貴方をおいてふらりと姿を消したこの兄を、許してくれるのですか?」


三郎のお兄さん・・・
そういえば、学園に入学する前に、どこかにいってしまったんだっけ・・・
そっか、会えたんだ、良かったね、三郎

僕は聞こえてきた会話に、今は入らない方がいいだろうと思って、その場を後にしようとした


「そこの子は、三郎の友達ですか?」
「えっ・・・あ、雷蔵・・・?」


気配は消してたんだけど、ばれちゃったようで
僕は角から顔を出した


「すみません、聞くつもりはなかったんですけど・・・・・・って三郎?」


僕が顔を出した時に見えたのは、お兄さんと思わしき人に顔を押しつけて背を向ける三郎だった


「あぁ、すみません、三郎は泣いた顔が見られるのが嫌らしくて・・・」


苦笑を浮かべてそういうお兄さんはその目に温かさを宿していて、悪い人じゃないんだなと感じた



彼の眼差しは温かく







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