伍 side:三郎 前から小松田さんが書類を持って歩いてきた 私は嫌な予感をひしひしと感じていた それは隣の雷蔵も同じだったようで 「・・・早く行こうか?」 「そうだな・・・」 そういいあって、早々に小松田さんの隣を過ぎようとしたとき、小松田さんは盛大にすっころんだ どてんといい音がして、紙が飛ぶ ・・・これは、手伝わないといけないのか・・・ そう思って私はため息をついた、隣の雷蔵も苦笑している 「いてて・・・」 「大丈夫ですか?」 「あ、ありがとう、不破くん、鉢屋くん」 また吉野先生に怒られるなぁと呟きながら、小松田さんは立ち上がって、私が集めた書類を受け取った そして私の顔を見ると、あ、と声を上げた 「そういえば、鉢屋くん」 「なんですか?」 「さっき学園長に用事があるって来たお客様が、鉢屋って人だったんだけど、鉢屋くんの・・・「その人の名前は!?」わぁっ・・・二葉さんって人だったよ」 それを聞くと、私は学園長の庵に向かって走り出した 後ろで雷蔵が私を呼ぶ声がしたけれど、私は振り返らなかった ――――― side:二葉 「・・・・・・」 ふと学園長先生から視線をそらした 学園長先生が、どうした?と声をかけてくださり、私は何でもありません、話の途中で失礼しましたと笑った 「それにしても、この羊羹は旨い!」 「ありがとうございます、そういってもらえると持って来た甲斐がありますよ」 「ここら辺のものじゃないじゃろう?」 「えぇ、備中での仕事の後、街に行きましたら良い小豆が売っていましてね、自作をしてみたのですよ」 学園長はなんじゃと!とおどろいて、これを二葉が作ったのか、凄いのーと褒めてくださった と、言っても、さすがに私も男の形をしていても、女だからな・・・それくらいできなければならないかと思ったんだが・・・ ・・・学園長先生は、確か知っていらっしゃったはず・・・ 「おや?この気配は・・・」 「鉢屋じゃのぉ・・・どこから情報を仕入れてきたんじゃ、あやつは・・・」 「ふふ、いいじゃないですか、三郎に会うのは実に5年ぶりなのですよ」 そういったとき、庵の障子がスパーン!と音を立ててあけられた明けられたそのむこうには、誰かの顔を借りた、三郎が立っていた 「〜〜〜〜!二葉兄上えぇぇっ!!」 顔を腹に押し付けて、三郎が痛いくらいに抱きついてくる 私は苦笑して三郎をなでつつ、学園長先生に、すみません、と言った 「構わん、良いものが食べられたしの、また持ってきてもらいたいくらいじゃ」 「お口にあったようでしたら良かったです」 それでは一度失礼します、と頭を下げた私は、三郎を腰に引っ付かせたまま、庵を後にした 可愛い弟 → 戻 |