もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









闇にまぎれた後
私は依頼主に髪飾りを渡し、報酬を貰うとさっさとお暇した
私としては、必要ない人にかかわると碌なことがないと知っているからね

・・・あぁ、久しぶりに三郎に会いたいな
今は・・・きっと忍術学園か

私はふっと口元に笑みを浮かべると、地を蹴った









数日後
私は近畿の山奥にある忍術学園に来ていた


「懐かしいな・・・5年経つのか・・・」


先生方は変わっていないだろうか?
三郎は元気かな
きっとたずねていったら驚くのだろう
それとも、忘れられてしまったかな
それは寂しいな、けれど置いてきぼりにしたのは私だし、仕方がないか
ふふ、と笑いながら、私は手土産を持った手とは反対の手で、学園の門を叩いた


はーいという声とともにひょこりと顔を出したのは男の子だった
こちらを見て、お客様ですかー?と聞いてくる


「学園長先生にお会いしたいのですが、よろしいですか?」
「はーい、では入門表にサインをお願いしまーす!」


渡された筆でサイドワインダーに挟まれた入門表に名前を書き込む
最初にこれを見た時は、なぜサイドワインダーなんてものが室町時代にあるのかと驚いていたな・・・懐かしい思い出だ
書き終わると、彼に向けてサイドワインダーを返す
その名前を見て、彼はあれ、と声を上げた


「鉢屋さんっていうんですかー、5年生の鉢屋くんと同じ苗字なんですね」
「それはもしかしなくても、鉢屋三郎ですか?」
「そうですよー、とっても変装が上手い子で・・・」
「そうですか・・・ふふ」


どうやら立派に成長しているようで何よりだ
私は事務員の彼に学園長の庵まで案内をしてもらった
小松田くん(案内してもらう途中で教えてもらった)が障子越しに、中に声をかけた


「学園長にお客様です」
「誰じゃ?」
「お久しぶりです、学園長先生、鉢屋二葉でございます」
「鉢屋・・・二葉じゃと」


すぱーんと音を立てて障子が開かれる
その場所には、学園長先生とヘムヘムが立っていた


「お久しぶりです、学園長先生」
「久しぶりじゃのう、二葉、入りなさい。ヘムヘム、お茶を頼む」
「ヘム!」

小松田くんにありがとうと言ってから、私は学園長先生の庵に入った



久しぶりの母校に







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