もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

過去の記憶




side:椿




わたくしは、それなりに裕福な家に生まれた次女でした
わたくしには年の離れた美しい姉様がおりました
姉様は異国の方と結婚し、生まれた子供は金の髪をしていました
姉様はその子をとても大切にして、幸せそうでした
わたくしも、姉様とその旦那様、そして異国の色を濃くもつ姪が大好きでした




けれど世間は無情だったのです



異国の色を持つ夫は近所の人々に殺されました
姉様は悲しみ、日に日にやつれていきました
そして夫の色を持つ姪に、すべての愛情を捧げました
姪も異変を分かっていたのか、姉様の過剰な愛情を受け入れていました
わたくしはただ、そんな2人の世界が壊れないように、尽力していたのです




ある日、父様と母様が姉様の元へ来ました
わたくしは父様と母様ならと、警戒など全くしていなかったのです
しかし、姉様の元から聞こえてきたのは悲鳴でした
わたくしは慌てて部屋に飛び込めば、そこには刃物の突き刺さった姪を抱いた母様と、姉様を何度も刺す父様がいました
わたくしは、何もすることが出来なかったのです


姉様が殺されてから、わたくしは父様と母様が怖くなりました
そんなときに来た縁談
今の旦那様に出会って、私はやっと恐ろしかった2人のもとを離れることが出来たのです




そして、鉢屋家に嫁いで7年目のある日
わたくしがあの日を思い出す色を持つ、二葉が引き取られたのです





過去の記憶







わたくしはただ
自分から二葉を遠ざけることで
過去の罪悪感から逃げようとしていただけだったのです








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