もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

陸参







一通り、三郎は居なかったが鉢屋衆への報告は済んで、私は鉢屋の家を後にした
まあ、報告といっても、長である父上の側近に報告しただけなのだが・・・大いに驚かれたのは、いうまでもない




少し前に、もう戻れないのではないかとおもっていた景色が広がる
遠くに忍術学園が見えた
その姿が近づくにつれて、私はなんだか嬉しくなった


「二葉!」
「っ三郎・・・!?」


門の前に待ち構えたその姿は数日前よりも明るい表情を浮かべていた
私に向かって大きく手を振っている
三郎のもとに付けば、三郎は悪戯を思いついたような顔でにやりと笑うと、腕を引かれた
ぽすり、と私の身体は三郎の腕の中に納まる


「三郎、どうかしましたか・・・?」
「あぁ、気にしないでくれよ、ただちょっとな」


三郎は私の問いかけをはぐらかすと、おかえり、と私の耳元で囁いた
私はその言葉に笑った


「ただいま」







これからは共に歩もう
偽りで塗り固めた"鉢屋 二葉"ではなくて、ただの二葉として、共に




偽りの果てに















オマケ

「あ、三郎だ」
「ホントだ、なんだか嬉しそうだな」
「ねぇ、あれって二葉さんじゃない?」


三郎が二葉を引き寄せる
その様子に、八左ヱ門が何だか恋人同士みたいだな、姉弟なのに、と呟く
すると、雷蔵があ、と声を上げた


「三郎、二葉さんのこと取り戻せたみたいだね」
「え?」「は?」
「雷蔵、取り戻すってどう言うこと?」


兵助、八左ヱ門、勘右衛門の不思議そうな表情に、雷蔵はにこりと笑った


「うん、二葉さん結婚させられるって知って、奪っておいでって言ったんだよ」


雷蔵の言葉に、3人は動きを止め、一拍置いてから、叫び声が学園に響いたのだった












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