陸弐 "鉢屋"への報告は、親しい者には大いに喜ばれた 同時に、何か残念がられたが ただ、以前から義母上に着いていた人には、嫌な顔をされた 今までを考えたら仕方がないな、とは思いつつも、義母上自身とは関係が良い方向に向かいつつあるだけに少々残念にも思う そういえば、義母上だが・・・ 「わたくしが産んだ子供はみな男の子ですし・・・やはりひとりくらい女の子が欲しかったとは思っていました」 「・・・はぁ、そうですか」 「ですからもう鬼などとは言わない代わりに二葉、あなたに小袖を着せても構いませんか・・・!?」 義母上はこんな人だっただろうか、と思わず義父上に相談してしまうほどに変わられた 義父上曰わく、元々はそう言う性格をしていて、本来の母と良く子供を着せ替えて遊びたいとこぼしていたそうだ 本来の髪と目の色のせいで、私に対してその気は無かったらしいが きゅ、という音がして、私は思考の海から現実に戻った 義母上は満足げに頷いている 「二葉、鬘をとりなさいな」 「え、ですが・・・」 「いいのです、あなたの本来の髪にあう小袖を選んだのですから」 私は義母上にいわれ、少し考えてから鬘を外した ぱさりと広がる金の髪 「これでよろしいですか?義母上」 「えぇ、思った通り、あなたの金には青が似合いますね。雰囲気もそんな感じですもの」 それに、と呟いた義母上は少し暗い、けれど懐かしさを含む表情を浮かべた 「・・・わたくしの姉さんの子に、似ているのですよ、あなたは・・・」 そう呟いた義母上に、私は追及することなく、ただ静かにそうですか、と返しただけだった 私は鬘を被りなおすと、義母上をまっすぐに見た 「私は、義母上の姪ではありません。ですが・・・また、着物を選んでいただけますか?」 「・・・ふふ、では今度二人で町に出かけましょう、貴方に似合う布を見つけなければ」 そう誘えば、義母上は少しだけ驚いた表情を浮かべたものの、すぐに笑った 私がから誘うのが意外であったらしい ・・・私も、そんな簡単に許していいものなのかとは思うが、・・・それでも、それぞれに事情があるのは仕方の無いこと 前世(まえ)の時代のように、ただ勉強しなさい、というだけではないこの時代で、仲違いをすることはなんだか持ったいないような気がしたのだ ・・・きっと、それは虫のいい話なのだろうけれど 己の子どもを大切にする椿様のように、私もいつか己の子を大切に出来るように きっと、彼女から学ぶべきことは、沢山ある ずれていた場所を元の形に戻すこと → 戻 |