伍玖 めまぐるしく進んでいく父上と三郎の会話に、私はこれは入らないほうが良いだろうと判断して口を噤んだままいた ・・・ら、なぜか変な方向に話が飛んでいる気がしてならない 「父上、三郎、それは、私を置いていったまま話が進んでいませんか」 「二葉はどうせ三郎の事好きだろう」 「・・・・・・」 なんだこれ、元から三郎から逃れられないとはおもってたけど、父上もノリノリじゃないか 父上は機嫌がよさそうだ 「まあ、名実共に二葉が娘になるなら私は別に構わないしな。お前の父とは、性別が違えば婚約させないかとか言ったこともあるほどだし、アイツも文句をいわんだろう」 「そう・・・だったんですか?」 「椿が嫌だと言ったからそちらを優先しはしたがな、私としては二葉、お前が嫁いでくるのは大いに歓迎だぞ?」 お前が居ないと男兄弟だけで花が無いしな、と笑う父上は本当に何でもなさそうだ 椿様は顔を白くしているというのに 「なぁ、椿。私は壱槻と二葉、そして三郎が揃ってやっと鉢屋だと思うのだ。それなのに、二葉をどこかにやってどうする、三郎も使い物にならなくなるどころか、家出して鉢屋を纏めるのが壱槻しか居なくなるぞ?」 「・・・それは・・・」 「それに、いつ二葉がお前に迷惑をかけた?お前が二葉を嫌うから、二葉はお前を母とは呼ばないではないか」 父上と椿様の会話に、私は何もいえなかった 私は養子だというのに、兄上と三郎と同じように私を認め、育ててくれた父上 惚れた弱みでよく母上に負けている父上なのに、今はその立場が逆転していた 「・・・私だって、最初は他の子と同じように二葉を愛そうとしました。けれど・・・!」 「おまえの事情も分かっているさ、当たり前だろう?」 私は三郎にちらりと視線をやると、ばっちりと目があった そして矢羽音が飛んできた (二葉、平気か?辛いとか・・・) (私は平気です。でも・・・父上たちはどうしたというのでしょうか) 視線を父上と椿様に戻せば、2人がこちらを向いたところだった 私は背筋をのばす 「二葉、すまなかったな。・・・椿には椿で過去があるのだ。何れ話すとは思うが・・・悪くは思わないでやってほしい」 「はい、分かりました」 「それで、三郎と二葉の話だがな」 父上が切り出すと、心なしか三郎の雰囲気が変わった 「三郎が卒業したら、結婚するということで、構わんか?」 「もとよりそう考えていたので構いません」 そう、間髪を入れずに返した三郎に、私は苦笑いを零した 纏まれば一件落着? → 戻 |