もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

伍陸






一度茶屋で休んでから、私は付き人である充と共に家に向かった
鉢屋の家は遠いから、普通なら1週間かかる
まあ、私も充も忍だから、その距離を5日で行ったわけだけど


「二葉、戻りました」
「入りなさい」


充と別れて、当主の部屋に向かった
失礼しますと声をかけて中に入れば、待っていたのは父上と椿様、そして知らない男性
・・・この人が私の嫁ぎ相手とやらか?
それにしては、やけに準備がいいのだな、私がいつ戻るかもわからなかったというのに
・・・あぁ、でも充を寄越したほどだ、遅くとも明日あさってには着いていたか


「よく戻りましたね、二葉」
「戻ってきてすぐのところ悪いがな、こちらの方がお前を妻にと言ってくださる方だ」


紹介され、にこりと笑うその男性は、20代後半と言ったところの印象を受けた
兄上と同じか少し上位だろう
40とかそこらへんの男性かとおもっていたのに、以外だ
ロリコンも居るが熟女好きも多いと聞くからな
この時代は20じゃ行き遅れだから十分に熟女の分類に入る、んだろう
私はあまりそちらの方面には詳しくないが・・・
なんたって、それこそこの年まで男として過ごしてきてるからな・・・
色の授業なんて無かったし、男色の色の授業も学園であったが・・・免除されていたからな


「始めまして、二葉さん、私は犬塚俊光と言う」
「・・・初めまして、犬塚様」
「ご両親から噂はかねがね聞いているよ」
「・・・そうですか」


・・・ものすごく気になるのは何故だろうか
あることない事吹き込まれている気がしてならない、椿様と父上だし


「そんな、敬語なんて要らないよ。夫婦になるんだしね」
「この口調は癖のようなものです、ご容赦を」
「・・・そうかい?なら無理強いはしないけれどね」


くすくすと笑うその顔に、嫌悪感を抱く
・・・この人とは、合わないな
学園に在籍していた頃に先輩で襲ってこようとして返り討ちにしたやつによく似ているし


「ここで話さないで、別の部屋で話すといいだろう」
「それがよろしいですわ。二葉、応接間にご案内なさい」
「・・・分かりました、いきましょう、犬塚様」


あまり気は進まなかったが、問題を起こすことは望ましくないため、犬塚とやらを連れて部屋を後にした
・・・憂鬱だ






知らない人










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