伍伍 side:三郎 二葉は?どこに居るんだ? 「三郎・・・」 意識の外側で雷蔵が気遣うように私の声を呼ぶのが聞こえた 二葉が居ない?どうして? 私に何も言わずに行ってしまった それほどの間柄だったっていうのかよ ぎり、とこぶしを握る 「・・・雷蔵、私」 「うん・・・行っておいで」 笑ってそういった雷蔵に背を向けて、私は部屋に戻った 部屋に戻って、すぐに外に出るための用意を整えると、私は学園を飛び出した 授業は、少しくらい受けなくても問題ない 先生には雷蔵が言って置いてくれるだろう 今私は何も考えずに二葉を追いかけるだけだ 鉢屋の家へ、私はただ走る ――――― side:付人 「三郎は、怒っているでしょうか・・・」 ぽつりと二葉様が呟いた その言葉に、私は返す 「三郎様は、二葉様にとても懐いておられましたから、怒るよりも先に悲しまれるのではないでしょうか」 「・・・どちらにせよ、泣かせていそうで怖いです」 下を向いて、ため息をつかれる二葉様 前にお顔を拝見したときは、こんな姿ではなかったというのに、椿様は二葉様にとってそんなに影響力のある方だったのでしょうか・・・ 「すみません、充。このような情けない姿で・・・失望しましたか?」 「いえ・・・二葉様が完璧な方だとははじめから思っていません。むしろ、前の完璧であろうとしていた二葉様のほうが、私には怖く感じられましたから・・・恐れ多くも、今の二葉様のほうが、近いと感じられます」 私が言えば、二葉様はくすりと笑って、そうですか、と一言こぼした そして立ち上がると、行きましょうか、と言って茶屋の主人に勘定を払っていた 私は慌ててお金を出そうとすると、二葉様にさえぎられる 「私に払わせてくださいよ、これくらい」 「ですが・・・」 「愚痴を聞いていただいた御代ということで納得してください」 にこりと笑う二葉様の表情はいくらか明るいものになっていて 払うことを譲りそうに無い二葉様に、私はでは、お願いできますか、と折れたのだった ある付き人による ――――― 充(みつる) → 鉢屋衆の忍の一人 二葉が逃げないかどうかの監視役として遣わされた 二葉と仲はいいが、公私混合はしないため抜擢された → 戻 |