参 私は新しい"皮"を被りました それは私が長年つけて来た、多くの人が鉢屋二葉だと認識する"皮" 「おや、久しぶりですね」 「できればお前には会いたくなかったさ」 「ふふっ、5年ぶりじゃないですか、もう少し喜んでくださいよ」 そして後ろからかけられた声 振り返りながらそういえば、苦虫を噛み潰したような顔をした男 共に学び、お互いを高めあってきたかつての仲間がそこに居た 「相変わらずその顔か?」 「いやだなぁ、別の顔を被っていたの、見てるでしょう?」 「・・・まあな」 すぅっと彼を見つめる目が細くなる ぴりぴりと空気が張り詰めた ちゃきり、と彼がクナイを構える 「鉢屋二葉・・・先ほど奪ってきたお前の持つその巻物、渡してもらおうか」 「・・・は?先ほどの城から持ってきたのは、巻物ではなく、どこぞのお姫様が所望した髪飾りだですよ、ほら」 「・・・・・・」 懐からやけに豪華な飾りを出す 残念ですねぇ、とにこにこ笑いながら私はそういった 彼ははぁ、と大きなため息をついた 「お前とかかわると碌なことにならないな、相変わらず」 「褒めても何も出ませんよ?巻物なら確かあの殿サマが寝てた部屋の戸棚の奥にあるにきらんきらんに飾った箱の中でしょうよ」 「それってお前教えていいのかよ」 「知りません、だって私はもうあの城と関係ありませんし」 彼は悪びれもなくにこにこする私に取り付いても何もないことを察したのか、クナイを仕舞った 「・・・まあ、お前が元気でよかった、他のやつ等は・・・」 「えぇ、死んだらしいですね・・・風のうわさで聞きました」 寂しいものですね、と呟く 私の学年はなかなか根性が座っていて、6年まで比較的多くの人が残っていた学年だった あの日、ともに卒業したのは、確か10人くらいだっただろうか ・・・それも、今は目の前に居る彼と、私くらいしか残っていないようですが 「忍びである限り、仕方ありません。割り切るしか・・・」 「そうだな・・・お前と戦場で会わないよう、カミサマにでも祈ってやるさ」 「出会ってしまったらその時はその時、全力で貴方に挑みますよ」 それでは、戦場で会わないことを願って 私と彼はそういって互いに背を向けて、闇夜に消えた 交わらぬ道は幸か不幸か → 戻 |