伍弐 side:三郎 二葉が、嫁ぐ? 私から、離れていくのか? ・・・それは絶対に、許さない だって、ずっと私のそばに居て欲しいから 私はそっと床下を抜けて、部屋に戻った 「あ、三郎、おかえ・・・り?・・・なにかあった?」 部屋に戻れば、雷蔵が私を迎えてくれた しかし、私の浮かない顔に心配そうな顔をした 私は雷蔵に縋るように抱きついた 「さぶろ・・・」 「雷蔵・・・二葉が、嫁ぐって・・・っ」 「・・・二葉、さんが・・・?」 私の、二葉に対する様子を見てきた雷蔵は、酷くうろたえた 私だって、出来れば信じたくない でも、二葉は母上に逆らえないんだ そうじゃなくても鉢屋では立場が弱いんだって小さい頃に言っていた あの頃は私も訳が分からなかったけれど、今思えば確かに二葉は鉢屋でとても立場が弱いんだ だって、養子だから 私は二葉が血が繋がっていない、養子だって知ってとても嬉しかったのに、それが仇になるだなんて! 「らいぞ・・・私はどうしたらいい・・・?二葉を誰にも渡したくなんてないけど、そうすると逆らう相手は母上で・・・っ」 「三郎・・・」 雷蔵が困ったような雰囲気を漂わせた そうだ、雷蔵に言っても、雷蔵がどうにかできるわけではないというのに ・・・馬鹿だな、私は 「あの、さ・・・」 「・・・?」 雷蔵が言いにくそうに私に話しかけた内容 その言葉は、雷蔵から出るとは思わなかった言葉だった 「・・・奪っちゃえば、いいんじゃないかなぁ」 「奪、う・・・って・・・」 「三郎のお父さんと二葉さんは仲悪くないんでしょ?で、今回の縁談も三郎のお母さんがわざわざ伝えに来たって事は、三郎のお母さんが進めたことなんだろうし・・・。三郎が、二葉さんを婚約者にしちゃえばいいんじゃないかなぁ」 だってほら、二葉さんは三郎と血、繋がってないわけだし、三郎と結婚すれば、名実共に"鉢屋"でしょ? そういった雷蔵は、特に悪気はなさそうで でも、確かに雷蔵の言ったとおり、きっと今回のは母上が進めたであろう事で ・・・なら、父上に言えば、二葉は嫁がなくてすむということだろうか 「分かった、やってみる」 「うん、頑張ってね、三郎」 雷蔵はそういってふわりと笑った 君を渡したくないから → 戻 |