もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

肆捌







障子を閉めると、とん、と小さな音を立てた
そして足元が崩れるような感覚
ずるりと私は座り込む


「・・・・・・くそ・・・」


トラウマであると分かっている
フラッシュバックしなければ、それは日常生活に支障が無いことも
それでも・・・ここ1年は無かったというのに・・・

つう、と水が頬を伝った


「失望、されましたかね」


三郎に


彼にとっての私は自慢できる姉でなければならない
兄上にとっての私は使える妹でなければならない
鉢屋にとっての私は

優秀な駒でなければならない

それが私が鉢屋にいられる方法
遠い昔に、彼女の言った言葉

私はぶんぶんと首を振った
今ここに彼女は居ないのだ
きっと悪いことを考えるのは起きているからだ
もう、寝よう・・・

私は布団にもぐりこんだ







翌日
学園から天女が消えたことに、何の違和感もなく、元に戻った姿の学園があった


「二葉くん、これお願いできる?」
「はい、頼まれました」


私も、いつものようにおばちゃんの手伝いをしていた

しかし、私はなにか嫌な予感を感じていて
トラウマにふれたことがあったりしたことから来る気のせいだと思っていたかった


けれど、それは気のせいで終わりはしなかったのだ



―――――
side:??



「ここが・・・」
「お客様ですか〜?」
「えぇ・・・鉢屋二葉に会いに参りました」
「はい、では入門表にサインをお願いしますー」

さらり、と書かれた言葉は、



―――― 鉢屋 椿




花の名は事の始まり








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