もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









キィン!と金属同士がこすれあう


「っな!」
「残念でしたねぇ・・・」


にぃっと意地悪く笑って、私は目の前の男に終止符をうった
崩れ落ちる身体を見向きもせずに、私はその場所へ向かった






「殿、貴殿を狙う輩は全て排除いたしました」
「おお、そうか!」
「殿様、わたくしとの逢瀬ですのに、そのような・・・」
「すまんな、すぐに行くから待っていなさい」


雇われ主の部屋へ行けば、お楽しみ中だったようで
・・・面倒くさいことこの上ないな
すうっと私は目を細めた


「褒美はまた後日にでも渡そう。今は体をやすめると「残念ながら、私の仕事は貴方の暗殺者撃退だけではなく、他にもあるのですよ」チッ・・・せっかちは嫌われるぞ・・・。まあ、いいだろう、そこに用意してある、勝手に持って行け」
「ありがとうございま、す!」


言葉と共に手を引けば、ごとりと鈍い音がした
報酬とこの城の宝である舶来品を持つと、隣で来ない殿を待っていた遊女を殺した

白い布団が赤く染まる
私はそれを無表情に見やると、闇に消えた



「・・・ふぅ」


べりり、と顔をはぐ
人がまわりに居ないことは確認済みだった
ふと空を見ると、月明かりはなく、新月であることが分かった



「・・・三郎は、元気だろうか」



置いてきてしまった、可愛い義弟
私にとって、あの子は光

目を閉じれば浮かんでくる
前の世での"僕"

家は人よりも裕福で、親は二人とも共働きだった
一人っ子だった僕は習い事や塾に行って、両親の期待を一身に背負っていた
テストでも一番を取ることが当たり前、優勝は当たり前
他の子がいい点数を取ると、親にほめられていたのが羨ましかった
一度でいいから、頑張ったなといわれたかった
だから頑張った、何でも一番が取れるようにと
けれど両親は僕を褒めてくれることはなかった

そんなときに起こった事故
相手は居眠り運転だった
幸いだったのは学校帰り、僕は友達が居なかったから、一人だったことだろうか?
被害は僕だけで
・・・・・・両親が、それをどう思ったのかは知らない

なぜなら、僕が再び目を開けたとき、僕は女の子としてこの時代で両親を持ったから
二人は僕に優しかった
ちゃんと褒めてくれた、叱ってくれた、私を、私と認めてくれた

・・・でも、その二人も、忍務先で亡くなった
長が、私を引き取ってくれて、息子として育てられた
長の息子だから、そういわれてまた期待を背負うのかと落胆し、諦め掛けた時に生まれた三郎
私は弟が可愛くて仕方がなくて、三郎にいろんなことを教えてあげるために、いろんな事に精を出した
私は本当に、三郎が可愛くて、三郎のために生きているといっても過言じゃないのだ




私の光







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