肆肆 あのくのたまの子が毒を飲まされたらしい 伊作くんからそれを聞いた私はそうですか、と急いで確認にいったけれど、ちゃんと伊賀崎くんは私が用意した毒を渡したようで、思っていたよりも被害は無かった 本来ならばもっと早くに死に至るような毒なのだが、先に毒性を弱めておいたのだ 新しい毒だから、伊作くんも知らないだろうし、それで本当に彼女が死んでしまったら、それは困るのだから 「腕を上げましたね、伊作くん」 「でも、二葉先輩に比べたらまだまだです」 「いいえ、新しい種類の毒だったのでしょう?それも毒性の強い・・・それなのにこれだけすぐに対処できるのですから・・・」 伊作くんは、苦笑して首を振った そして、僕だけの力じゃないですから、と呟いた 「丁度よく竹谷が来てくれなかったら、きっと彼女は・・・」 「不運委員会なのに幸運だった、良いことじゃないですか。それに昔言ったでしょう?保健委員会が不運委員と呼ばれるのは、自分の幸運を人にあげているからだと」 私は少しだけ高い位置にある伊作くんの頭に手を置いた 彼が、一年生だったときのように、私はその頭を撫でた 「君のいいところは、その優しいところですけどね、伊作くん。気にしすぎるところは、あまりよくありません、と昔々にも言ったような気がしますよ?」 「・・・そうですね、先輩に言われてました」 目を細めて、懐かしむようにそういった 「泣き虫でしたねぇ、本当に」 「・・・あはは・・・本当に、恥ずかしいですよ」 「6年離れているとね、可愛らしく思えるものですよ。今の一年生、そう思うでしょう?」 「はい、二人ともとても可愛いですよ。僕にもこんな時期があったなって思います」 くすくすと笑いながら、頭においていた手を取る そして、呟いた 「いつの間にか、伊作くんにも身長を追い抜かされてしまいましたね・・・あんなに小さかったのに・・・」 「一年生の頃は二葉先輩がとても大きく思えてましたけど、実際はそうでもないんだなって・・・。それに、身長にそこまで差がないって言うのもなんだか僕としては考え物ですよ?」 「・・・さすがに、6年間保健委員会やってるだけあって分かりますか」 伊作くんの言葉に、私は潔く肩をすくめた どうやら私が女であると気がついたらしい まあ、保健委員会に居れば、嫌でもそういった違いは知れる部分はある 仕方ないといえば仕方ないのだろう、と取るしかない それに、今は別に隠さなければいけないわけじゃない 面白いから隠しているだけで 「隠してたんですか?」 「いえ、面白いので言ってなかっただけで」 「そ・・・そうですか・・・」 私が正直に答えれば、伊作くんは先輩らしいですね、と笑った 遊び心のかくれんぼ → 戻 |