もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

肆弐




side:三郎



学園に最高学年がおらず、教員も多くが出払っていた
それを知るのは学園の関係者のみだ

だが学園に、重要な事柄を漏らす人物など居ない筈だった


「天女サマとやらが来るまでは」


最近は同級生たちがあの女に傾倒し、私は暇があれば二葉の元にいた
まあ、そこには綾部や伊賀崎も居たけれど
二葉も含めて、一緒に居た者たちは私と同じようにあの女が嫌いだし、話しかけてくればいつも迷惑そうにしている様子があった


「アレは本当に無自覚なのか、疑問ではありますよ」
「自覚があったらたちが悪いだろ」


クスクスと笑いながら言う二葉に、私はむっとしながら返した
二葉はただ笑うだけだ


「二葉」
「まったく・・・もう兄上とは呼んでくれませんね」
「・・・私はくのたまに協力するんだ、あの女を学園から亡き者にする」


二葉の言葉を聞かなかったふりをしてそういえば、二葉はなんだか寂しそうに笑った
・・・それでも私は、もう二葉を"身内"だなんて思えないから


「三郎、やりたいようにしなさい。後悔さえしなければそれで良いです」
「・・・あぁ、そうする」







さあ、何も知らない"美しくて可愛らしい天女"様に、ご退場願おう
この場所は闇に忍ぶ者を育成する場所であって、光ばかりを願う"天女"様にはふさわしくないのだから

・・・あぁ、そうだ綾部と伊賀崎も誘おうか
だって二人ともあの女が大嫌いだったし、二葉のことを慕っているから
きっと嬉々として協力してくれるだろう


「楽しみだな」


きっと喜んでくれるだろう

"友達"と思ってたくのたまに裏切られ、好意を寄せている二葉には振り向きもされず、何も知らないまま死んで行く

とても滑稽だろ?






好意的な感情?そんなの最初から無いってことさ








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