もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

参肆








あの天女とやらに自己紹介をしてから、何かと理由を付けて仕事を邪魔されるようになった
書類を作れば墨をこぼされ(それについてはやる人がもう一人いるが)
薪割りをすれば近づいてきて怪我をし
調理をしていればいらないのに手伝うと申し出てきて、動きづらくなり3人居るのに効率は2人の時より落ちるし
学園長に頼まれて、届け物をしようとすれば自分も行きたいと言い出すし
それを見ていても生徒たちはあの女を擁護するだけで、いくら私が穏やかな性格をしていてもいい加減ブチ切れそうだ


「っあ!二葉くん!」
「おや、天女様。今日はどうなされましたか?」
「あ、あのね・・・もしよければ、私と、その・・・街に行ってくれないかなぁ・・・?」


頬を赤く染めて言う女
気持ち悪くて仕方ない
こいつの後方で私に向かって殺気を飛ばす上級生に、私はなさけないなと感想を持った
私は優しげな笑みを作った


「すみません、仕事がありますから、街には行けないんですよ。あそこに6年生が居ますから、彼らを誘ったら連れて行ってくれると思いますよ。それでは」
「え、あ、二葉く・・・」


私は女の返事を待たずにそこを去った




―――――
side:天女




去っていく後ろ姿に、私はほぅっとため息をついた


「二葉くん、かっこいいなぁ・・・」


お仕事第一っぽいのは玉に瑕だけど、それって責任感が強いって事だろうし、私が墨こぼしちゃっても、書類は書き直せばいいと言って許してくれて、尚且つ私の着物が汚れていないか心配してくれたり、二葉くんが薪割りをしてて、破片が飛んで怪我しちゃったときも二葉くんが持ってた傷薬塗ってくれたし、料理の手伝いは難しいのは二葉くんがやってくれて、簡単な私に出来るのだけを回してくれて
ありがとって言っても、お礼を言われるようなことはしてないって笑ってくれるの!
きっと気があるからそう言う事してくれるんだよね?
いつになったら私を好きって言ってくれるのかなぁ・・・

あ、すぐそこに6年生が居るんだっけ
二葉くんと行きたかったけど・・・仕方ないから6年生でもいいや♪


「あっ!小平太くーん!」







すべてアナタの勘違い








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