もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

参壱




side:雷蔵



夕食の時間
ここ何日かはかなさんが立っていた位置に、二葉さんが居た
それを見た三郎が、いつもの調子で突撃していった
相変わらずの二葉さん大好きっぷりに、僕は相変わらずだなぁと呟いた


「兄上!いつ帰ってきたんですか!?」
「丁度一刻半(3時間)ほど前ですかね・・・帰って着替えてからすぐに調理場に来ましたよ」
「おかえりなさい、二葉さん」
「ただいま戻りました、雷蔵くん」


三郎に追いついて、僕が挨拶すれば、二葉さんは優しい笑みで返してくれた
その中には若干、三郎に対する苦笑も混じっていたけれど
ふと調理場を覗くと、先ほど分かれたかなさんが居ないのに気がついた


「あれ、かなさんは・・・?」
「あぁ、むこうでご飯を食べていると思いますよ」


むこう、という言葉と共に視線の向いたほうを辿れば、そこに女物の着物を着た後ろ姿が見えた
共にいるのは4年生らしい


「折角誘おうと思ったのになぁ・・・」
「また明日誘えばいいじゃないですか?これからずっといるんでしょう、彼女」
「そう、ですね・・・」


残念だったけれど、二葉さんにそういわれて、僕はかなさんから視線を外して、今日は何にしますか?と聞く二葉さんを前に、A定食かB定食かを悩むのだった







―――――
side:二葉




雷蔵くんと話している途中、三郎からびしばしとあの女に飛ぶ視線
その視線には敵意と少しだけ不安そうな感情が混じっていた
そんな様子に、私は何かあるのだろうと矢羽音を飛ばした


(三郎、後で私の部屋に来てください)


私が伝えれば、三郎は雷蔵くんにばれないよう、小さく頷いた
そして、悩み始めた雷蔵くんに、定食を決めさせて、離れていった

本当に、私が居なかったこの1週間で何があったんだか・・・
注文しようとこちらに向かう子の視線が、やはりあの宇佐美かなという女に向く様子を見ながら、私はばれないようにため息をついた






不可解な視線の先








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