もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

弐肆






庄左ヱ門君と彦次郎くん(二人にそう呼んでくれといわれた)から聞いた話だと、どうやら今は委員会活動中だったらしく、なかなか来ない三郎に、尾浜くんが多分私のところに居るからと送り出したのだそうだ
尾浜くん、あのときので既に三郎の行動を見極めたのか、さすがだな


「そうでしたか、では三郎を連れて行ってやってください」
「!?兄上、私を売るのかっ?」
「売る売らないではありませんよ、委員会はきちんと出席しなさい。下級生のお手本となるべき上級生がそのようにワガママを言っていてはいけません」


傷ついたような顔をした三郎に、私は少々痛烈な言葉をかけた
しかしこれもしつけ、とぴしゃりと言いつける
三郎は少しだけ悲しそうだったが、これからずっと居るのですから、といえば、しぶしぶと二人を連れて委員会をする部屋へ向かっていった
私はそれを見送って、久しぶりに医務室でも、と慣れた道を歩いた







どんがらがっしゃーん!と聞こえた音に、私は苦笑を漏らした
相変わらず、保健委員会は不運委員会らしい
その証拠に、医務室から聞こえてくる慌しい声と気配
大変そうだなぁと思いながら、私は医務室の扉に手をかけた


「大変そうですね、手伝いましょうか?」
「え・・・えぇっ!二葉先輩!?」


驚いたようにそう言った伊作くんに、私ははい、と答えた
驚いた表情のまま固まった伊作くんを見ていたら、くいくいと袖を引っ張られた
誰かと思って下を向けば、井桁模様の制服を来た一年生・・・なんだか雰囲気が暗いから、斜堂先生のところの生徒なのだろう
私はその子に視線を合わせるようにしゃがんだ


「どうかしましたか?」
「あの、貴方は誰ですかー?」
「私は鉢屋二葉といいます。伊作くん・・・善法寺くんが一年生だったときの、保健委員会委員長だったんですよ」


私がそう言えば、彼はそうだったんですかーと言って、自己紹介をしてくれた


「僕は1年ろ組の鶴町 伏木蔵っていいますー」
「あ、私は1年は組の猪名寺 乱太郎です!」
「お、俺は2年い組の西川左近、です」
「僕は3年は組の三反田数馬です」
「はい、自己紹介ありがとうございます。私は先ほど言ったとおり鉢屋二葉です。三郎と被りますので二葉と呼んでくださいね」


そういって私は笑った
そして伊作くんに向き直った


「そろそろ復活してはどうですか?」
「・・・あっ、二葉先輩、何でここに・・・?」
「学園で働くことになりましたからね、久しぶりに医務室に顔を出したんですよ。さあ、今のままだとご飯に間に合いませんよ、片付けましょう?」


そういって私は手早くばら撒かれた薬草を種類ごとにまとめた




医務室の不運








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