弐参 学園に戻ってきて正式に学園長から雑用係として雇用してもらうと決まってから、私は職員室なるところに居た 正確に言えば職員室ではないのだが、現代のそれと似たようなものだから私は便宜上そこを職員室と呼んでいる 話は逸れたが、私は教員達の前に居る 理由は挨拶、なのだが・・・5年前に在学していた私がいまさら挨拶も何もあるのかと聞きたいものだ 「・・・自己紹介、する必要ありますか・・・?」 呟くようにそう問いかければ、苦笑が返ってきた まあ、そんなものだろう、だって私も一人一人の先生方の名前も顔も知っているのだから 「まあ、よろしく頼むよ、二葉」 「えぇ、よろしくお願いします、先生方」 山田先生は苦笑した笑顔のまま、私にそういったので、私は軽く頭を下げて返した 「兄上っ!」 「三郎・・・早いですね」 職員室から出てすぐに飛びついてきた三郎を私は危なげなく受け止めた 子どものように・・・まあ、実際子どもだが・・・、三郎はいつもならば見せないであろう子どもらしい笑顔を浮かべた この笑顔を見ていると、私も昔に戻ったように思えるから不思議だ 「兄上、許可はもらえたんだろ?」 「えぇ、20にもなって戦忍をしているのも、といわれましたからね」 戦忍になっても良いと言ったのは父上なんですけどねぇと漏らしながら、私はそういった 三郎は、それが父上だし、と言いながら、ぐりぐりと私に頭を押し付ける そんな様子が私は可愛くてたまらないのだ そう思いながら、私は三郎の頭をなでた 三郎を連れたまま廊下を歩けば、軽い足音と二つの気配が近づいてきた 足音の軽さと気配からして、1年生だろうか・・・? 角を曲がると井桁模様の水色と鉢合わせした 「っ、ごめんなさいっ」 「ごめんなさい・・・って、鉢屋先輩」 「えっ」 二人の1年生はぶつかりそうになったことを謝って来て、けれど私にべったりの三郎を見て声を上げた そして眼を丸くする 「鉢屋先輩が・・・」 「いつも以上に気持ち悪い笑顔・・・」 「おやおや、酷い言われ様ですね、三郎」 くすくすと笑いをこぼしながら三郎にそういえば、庄も彦も酷いぞ!と声を上げて抗議した 1年生の二人組みは私が誰だか気になったのか、何か言いたげな顔をするも、すぐに片方が声を上げた 「貴方はどなたですか?」 「あぁ、すみません。私は鉢屋二葉、こちらの三郎の兄です・・・まあ、正確には義理の姉になりますが、面白いのでしばらく黙っていてもらえますか?」 「鉢屋先輩の、お姉さんですね。私は1年は組の黒木庄左ヱ門です」 「僕は1年い組の今福 彦四郎です」 私は二人の頭をなでると、優しい笑みを浮かべて、黒木くんに今福くんですね、いつも三郎がお世話になっています、と返した 三郎は、私がそういったことに不満だったのか、世話をしているのは私だぞ、と抗議して、1年生の二人組みに突っ込まれていた 1年生の二人組 → 戻 |