もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

弐弐







「あ、鉢屋さん、入門表にサインをお願いしまーす!」
「あぁ、はい」


門をたたけば、入り口を開けてひょこっと小松田さんが顔を出した
私の姿に、にへらと笑い、サイドワインダーと筆をつきだした
私は苦笑をこぼしつつ、差し出された筆を取ってサインした


「はい、ありがとうございます。おかえりなさい、鉢屋さん」
「ただいま戻りました・・・あぁ、そうだ、小松田さん、鉢屋では三郎と混ざりますから、二葉で構いませんよ」
「あ、そうですかー?じゃあ二葉さんって呼ばせてもらいますね」


へらりとゆるく笑った小松田さんに、私はよろしくお願いしますね、と返した
そして小松田さんは思い出したようにあ、と言った
私は首をかしげ、どうかしましたか?と聞く


「学園長に、二葉さんが帰ってきたら庵に来るようにといわれました。確かにお伝えしましたよ〜」
「あぁ、はい、ありがとうございます」


私がそれでは早速向かいますので、これで、といえば、小松田さんにはーいと返された
私はそれを聞いてから庵へ向かう廊下を歩き始めた






一週間前とはまったく違うな、と思いながら、私は庵の外から学園長先生に声をかけた


「学園長先生、鉢屋二葉、戻りました」
「おぉ、入りなさい」


入室するように言われて、私は失礼しますと障子を開けた
囲碁を片付けているヘムヘムに手伝いましょうか、と声をかけたが、座っていてくれと返されてしまったので、私は学園長先生の前に腰を下ろす


「して、色好い返事はもらえるのかの?」
「えぇ、20にもなって一人身で戦場をうろつくよりも学園に居たほうがいいだろうと」
「浮き話の一つもないとは、おぬしらしいといえばらしいの」


がっはっはと笑う学園長先生に、私は苦笑を返すだけだった
こうして、私は学園のおばちゃん手伝いと学園長の暇つぶし相手になった
・・・あぁ、事務員手伝いと、残党狩り係りも、か?
どちらにせよ、私は再び学園の一員となったのだ



立場違えど








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