弐拾 久しぶりに顔を付き合わせる父上は分かれた5年前と変わらなかった 「久しぶりだな」 「はい、お久しぶりです、父上」 「元気にやっていたか?」 ご覧の通りです、と帰せば、そうか、と帰ってくる返事 部屋に沈黙が下りる 「忍術学園で、事務員、だったか?」 「えぇ」 「できれば嫁ぐ、位の報告が良かったんだがな・・・」 はぁ、と父上はため息をついた 兄上と同じ反応 本当に父子だと感じさせられるものだ 「まあ、構わん。20では既に行き遅れだ。いつまでも戦忍をしているくらいなら学園で事務員をやっていたほうが安心だというものだ」 「父上ならばそういうと思っていました」 なんたってすぐに私のことを送り出した張本人だ、認めないほうがおかしいだろう そうじゃなくても父上、意外と子どもが可愛いらしく、努めて冷たく当たっている節がある 既に精神年齢が40近い私としては、父上のそんな様子がかわいらしく思える 一番かわいいのは三郎だが ・・・ブラコンでなにが悪い まぁ、予想はしていたが、許可が降りて何よりだった 「許可も頂いたことですし、私はそうそうに学園に戻ろうかと・・・」 「ずいぶんと慌ただしいな」 「・・・ふふ、今夜は一杯やりますか?兄上も交えて」 どことなく残念そうであった父上に、私は笑って、そう持ちかけた 今夜は満月とは言わないが、それなりに月が満ちるはず 月見酒とでも洒落込もうじゃないか 鉢屋の家で一夜明かした次の日 私は母上に見送られて玄関に立っていた 父上と兄上は、酒に強いわけではなかったらしく、まだ寝ているらしい 家を出る前に情けないですねぇ、と兄上に笑えば、お前が強すぎるだけだ、このうわばみめ・・・と唸られた 度数の低い一升瓶5本程度で酔いませんよ、と言い返せば、あれのどこが低いんだ、とげんなりしながら言われた ・・・三郎も弱いのだろうか?そのうち酒盛りがしたいと思っていたんだが・・・残念だ 鉢屋の家にて → 戻 |