拾玖 食堂の片付けまで手伝ってから、私は荷物を持って門の前に立っていた 「それでは、私は一度鉢屋の家に戻ります」 「兄上、戻ってきてくれないと私が泣くからな!」 「はいはい、肝に銘じておきますよ」 ぽんぽん、と三郎の頭をなでて、ほら、授業に行きなさい、と背中を押した しぶしぶと言った感じで私を一度見やると、教室に向かっていった 私はそれを見送ってから、小松田さんに差し出された出門表に名前を書き、鉢屋の家を目指した 「で、家に帰ってきたのか」 「えぇ、そうなります」 少しだけ呆れたような表情をしたのは壱槻兄上だった 久しぶりに帰った用事が忍者辞めて・・・まあ、正確に言えば辞めるわけではないのだが、学園の事務員になってもいいか、ではまあ、呆れられるのも仕方のないことだろう 三郎の願いだと言えば相変わらずだなお前と言われたが 「二葉も、そろそろ身を固めたらどうなんだ。すっかり行き遅れじゃないか」 「私が鉢屋二葉である限り無理でしょう、それ。周りから私男だと思われているんですよ?」 この身長ですし、違和感がないみたいですからね、振る舞いも、と言えば、兄上もあぁそうだな・・・とため息をついた 私は女性にしては168cm程度と長身である 振る舞いだって、前世が男だったおかげで身についている そこに変装術で声と顔を男にしてしまえば、立派に男性だ 「俺はお前が女とまぐわう時が来るんじゃないかと気が気じゃないぞ・・・」 「学園内でしたらなんどか告白されてましたが」 「全部断っていただろう?」 「えぇ、三郎が居ますからね」 安心してください、壱槻兄上、三郎が私を嫌わない限り私は誰とも結婚する気はありません、とにっこり笑って言えば、兄上はそれは喜ぶべきことではないぞ、二葉・・・とげんなりした顔で言った 私はそんな兄上を見ながら、ふふふっと笑った 筋金入りのブラコンですが、なにか? → 戻 |