もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

拾捌







ふっと意識が浮いた
どうやら、朝のようだ
私はむくり、と起き上がる


「・・・・・・」


ぼうっとした頭で、少し考える
昨日は、三郎に髪を拭いてもらって、寝たんだったか
隣に視線をやれば、すぅすぅと寝息をたてている二人
その様子に、私は柔らかい笑みを浮かべた
二人を起こさないように立ち上がり、着替えると、私は井戸で顔を洗って調理場へ向かった







「あら?二葉くん?」
「おはようございます、おばちゃん」


どうしたの?と不思議そうに問われ、お手伝いに、と返せば、おばちゃんはありがたいねぇ、と笑った
おばちゃんに包丁を借りて、野菜を切って、味噌汁の具材として鍋に入れる
今日は玉ねぎの味噌汁らしい
その後、キンピラゴボウを作った
おばちゃんも主菜を作り終えたらしく、いつもより早くすべて作り終えることができたようだ


「ありがとうね、二葉くん」
「私はそれほど手伝ってませんよ」


先にどうぞ、と出された定食に、ありがとうございますと返して、一足早い朝食にありつく
やはり学園の食事が一番おいしいな
普段なら早く食べる食事を、久々とゆっくり食べた気がする



そうしている内に、生徒達が食事に来始めた


「おはよう、兄上っ」
「おはようございます、二葉さん」
「おはようございます、三郎、不破くん」


食堂に顔を覗かせた三郎が、キョロキョロと見回し私を見つけると、どこか嬉しそうに駆け寄ってきた
三郎の後ろから歩いてきた不破くんは、そんな様子に苦笑を浮かべている
二人に挨拶をすれば、不破くんが微妙な顔をする


「あの、昨日も思ってましたけど、雷蔵でいいです」
「そうですか?」


首を傾げつつそういえば、不破くん改め雷蔵くんは、はい、とふわふわした笑顔で頷いた


「あ、三郎!雷蔵!」
「部屋にいないと思ったら先来てたんだね」
「行くなら行くって言っとくれりゃよかったのに」


三郎と雷蔵くんが振り返った先には、紺の制服を来た久々知くん、尾浜くん、竹谷くんの3人 がいた
私は小さく笑って、すみません、3人とも、と口に出した


「三郎は私が居ないことに気づいて来たのでしょうから、あまり怒らないであげて下さいませんか?」
「兄上・・・!」


私がそう言うと、なぜか三郎がきらきらした目で私を見てきた・・・なにか喜ばせるような事しただろうか・・・?




朝の一コマ








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