もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

拾伍







「あ、三郎、二葉さん」


部屋につくと、不破くんが布団を敷いていた
私はありがとうございます、と笑う


「兄上、風呂入ってないよな?もしよかったら、一緒に・・・」


三郎が言ったセリフに、私はあ、と声を上げた
三郎はびくり、と肩を跳ね上げる
そんな三郎に、私は三郎が何かしたわけではありませんよ、といいつつ、ただ、と続けた


「この際だから言っておきますが、私、兄ではなくて姉なんですよ、それも義理の」
「・・・え?」
「それって、二葉さんは女性って言うこと、ですか・・・?」


えぇ、見えないでしょうけれど、と言いながら、にこりと笑う


「ですから、いくら駄々をこねたところで一緒に入ることは出来ませんよ」
「兄上が・・・姉上・・・」
「ってことは、二葉さんは6年間ずっと男の中で・・・」
「まぁ、変装の鉢屋ですからね、出来なければいけなかったというのが正直なところですが・・・三郎が本気で気がついていなかったとは思いませんでしたね」


三郎は幼い頃から出来る子でしたから、気がついてなお、兄と呼ばれているのかと・・・とこぼせば、兄上たちの変装が完璧すぎるんだよ・・・と三郎はがっくり肩を落とした
私はそんな三郎の頭をポンポンと軽く叩く


「見破れなければ、分からなければ、今はまだ学べるのですから、存分に学びなさい、三郎」
「もしかして、昼間の力をつけろって・・・」
「私はどう足掻いても女ですからね。いつかはどこかに嫁がなければなりませんので、いつまでも鉢屋には居られませんし。まぁ、こんな行き遅れを貰う物好きが居るかも分かりませんが・・・」


兄上の補佐は貴方になるはずですから、と呟いた





実は実はのカミングアウト








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