拾弐 時間がたつというのも早くて、食堂で話し込んでいたら夕食を作らなければならない時間になっていた 「あらやだ、もう夕飯の準備をしないといけないわねぇ・・・二葉くん、ごめんなさいね」 「いいえ、引きとめてしまったのは私ですから」 「ご飯は食べていくのかしら?」 「そうですね、久しぶりに頂きたいです」 じゃあ腕によりをかけて作らないといけないわね、とにこりと笑ったおばちゃん けれど、椅子から立ち上がろうとしたときに、少しだけ顔を顰めた それは普通では分からないくらいであったけれど、その表情に私は少し気になって声をかけた 「・・・もしかして、どこか体を壊してますか?」 「二葉くんは本当にいろんな事に気づくのねぇ」 腰をね、ちょっと痛めてるのよ、年だから仕方ないんだけど、と苦笑しながら答えてくれたおばちゃんに、ならばと私は手伝いを申し出た おばちゃんはお客様だからそんなことさせられないと言ったけれど、私はお客様であるつもりはないし、お世話になったおばちゃんを手伝いたいと思うのは普通だと言って、手伝わせてもらうことになった 「悪いわねぇ、二葉くん」 「いいえ、気にしないでください」 そういって、野菜を切るのを手伝う 横目でおばちゃんを見ながら、作業をしていて、分かったことは、やはりおばちゃんは腰を庇いながら料理をしている気がするということ アレでは他の場所に負担がかかって悪化しかねない 「おばちゃん」 「どうしたんだい?」 「向こうで休んでいてください、腰を庇いながらでは、他のところを悪くしてしまいますから」 「でも・・・」 私、保健委員長だったんですよ?と笑えば、おばちゃんは観念したように、仕方がないわね、お願いするわ、と言った 私は任されました、と言って、おばちゃんを食堂の椅子に座らせて、また作業を再開した しばらくして、今日の夕飯であるアイナメのやわらか揚げ煮と豚バラ肉とたけのこの甘辛煮込みが完成して、小鉢はほうれん草の和え物、汁物は豆腐とわかめの味噌汁にした カーンとヘムヘムの鐘の音が鳴って、どたばたと聞こえる足音 「おばちゃーん!今日のご飯・・・って、あれ?」 「どうしておばちゃんが食堂で座ってるんですか?」 「今日は二葉くんがやってくれてねぇ・・・」 井桁模様の水色の制服 どうやら1年生のようで、こちらにこんにちはー!と声をかけてきた 「こんにちは、AとB、どちらにしますか?」 「今日はなんですかー?」 「Aはアイナメのやわらか揚げ煮で、Bは豚バラ肉とたけのこの甘辛煮込みですよ」 「どっちもおいしそう・・・」 「私はAで、きりちゃんは?」 「おれも乱太郎と一緒でAかなー、しんべヱは?」 「じゃあ僕はBにする!」 少しまっていてくださいね、と声をかけて、3人分の定食を渡す そのときに、お残しは許しませんよ、といえばはーいと3人分元気よく帰ってきて 三人はおいしそうー!といいながらお盆を片手に席に着いた ・・・こちらに向かってくる気配は多い、これから大変になりそうだ そう思いながら、久しぶりのこの雰囲気にくすりと笑みをこぼした おばちゃん代理 料理名参考 → ● → 戻 |