もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

拾壱






わぁわぁと言いながら、楽しそうな5人を見て、私にもこんなころがあったなと思いながら、声をかけた


「行くのでしたら早めに行ったほうがいいですよ、新しくできた甘味処でしたら、相当並ぶでしょうし」


私がそう言えば、慌しく5人は出発していった
自分の部屋ではないが、部屋から5人を送り出すと、私は懐かしい食堂への道を歩いた







食堂に着けば、そこはがらんとしていて、けれど調理場では誰かが作業している気配がする


「おばちゃん」
「うん・・・?おや!二葉くんかい?大きくなったねぇ」
「お久しぶりです、お変わりない様で」


お茶でも飲むかい?と声をかけてくれたおばちゃんに、私が入れますよ、と申し出た
在学中も、誰かと話すときはお茶を入れるのは私の役目だった


「悪いねぇ、いつも」
「いいえ、これも私の役割でしたからね」


そういいながら、お茶を注ぐ
どうやら調理場の方はひと段落したようで、こちらに茶菓子を持ってきてくれた


「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうね、二葉くんの入れてくれるお茶は美味しいもの」


そういって前にお茶菓子・・・お饅頭を置いて、おばちゃんは向かい側に座る
私はお茶を注いだ湯飲みを片方おばちゃんの前に置いた


「それにしても久しぶりだねぇ、5年ぶりかい?」
「えぇ、そうですね・・・あの時1年生だった子達・・・今は6年生ですが、彼らにはまだあっていなくて」
「なつかれてたわね、二葉くん・・・やっぱり少なくなっちゃったけどねぇ」
「私の年が異常に多かったんですよ」


それはそうなんだけどねぇ、と顔を暗くするおばちゃんに、私はできるだけ優しく笑いかけた


「いつまでも子どもの気分などではいられないのです。1年生のときは、それはもう可愛かったですが、可愛いだけではいられませんからね」


でも、私が構い倒していた子たちは、みんな残っているんでしょう?とおばちゃんに聞けば、おばちゃんは二葉くんは何でもお見通しね、と笑った
忍者ですから、と少しだけ意地悪く笑えば、おばちゃんもそうねと笑って
なんだか私は5年前に戻ったような感じがした





懐かしいその笑顔







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