もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









「わしは賛成じゃ!」
「学園長先生・・・」
「お主にぜひ学園に留まって欲しいと思っておるのじゃ」


唐突に現れた学園長先生に、5年生が驚くのを横目に、私はじとりと学園長先生を見た


「その本心は?」
「二葉の作った羊羹がうまかったからじゃ」


そう言った学園長先生に悪びれはなく
何となく読めていた私は苦笑を返した


「私の一存では是と言えませんよ」
「鉢屋の許可というやつかの」

私は頷いて返して、不安そうにしている三郎の頭に手を置いて、くしゃりと撫でる


「私も家に5年帰っていませんから、聞きに行ってみましょう」
「おぉ!行ってくれるか」


では、頼んだぞ、と残して、学園長先生は去っていった
学園長先生と言う名の嵐が去って、三郎も含めた5人は少しだけ呆気にとられた顔をしていた
私はそれがなんだかおもしろくて、ふふっと笑いを漏らした


「5人ともそんな顔して、そんなに意外でしたか?」
「いえ、学園長の思いつきはいつものことですけど・・・」
「三郎の兄さんがそんな簡単に了承するとは・・・」
「正直、思いませんでした・・・」


私が問いかければ、少し言いづらそうに久々知くん、竹谷くん、不破くんがそう言って、尾浜くんも同意した
三郎を見やれば、少しだけ意外だったと零した


「私も大概楽しいこと好きですからね」


人の顔して騙したり、とか日常茶飯事ですよ?
そういって笑えば、三郎は笑顔になって、それ以外の4人は対照的にげんなりとした
どうやら三郎も私と似たようで・・・
私は学園長先生に中断された行動を行うために、さて、と切り出した


「何時までも部屋にお邪魔するわけにも行きませんし、おばちゃんに会ってきます。三郎たちは、どこかに行く予定じゃなかったんですか?」


私が邪魔してしまったようなものですが・・・と言いながら、首をひねれば、5人はあ、と声を漏らした
どうやら忘れていたようだ


「どうする?今から行くか?」
「少し遅くなったから、今から行っても並んでまで食べる時間ないんじゃないか?」
「えー、折角新しい甘味処いけると思ったのに・・・」
「それはまた今度にすればいい、だって甘味処は逃げないじゃないか」
「三郎、勘ちゃんは話題性があるうちにいきたいって事だと思うんだけど・・・」


竹谷くんが聞けば、久々知くんが日の位置を見て返し、その言葉に尾浜くんが残念そうに肩を落とした
どうやら甘味好きであるらしい
三郎も甘味好きではあるが、私と居るのと、甘味では私に軍配が上がったようだ
そんな三郎に、不破くんは苦笑している


「三郎、私も逃げませんよ、どうせ家に帰っても身を固める気がないんだから勝手にしろと言われるでしょうからね」


私がそういえば、兄上が結婚するのはダメだ!と力いっぱい言った三郎に、苦笑を返した




思いつきの行方







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