もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ









「雷蔵ー、三郎ー、どうかしたの・・・・・・か」
「雷蔵が3人だね」
「勘ちゃん、ひとりは三郎だろ」


気配が近づいてくると思っていると、ひょこりと部屋を覗き込んできたのは5年の制服を着た子で
不破くんの顔が3つあることに驚いているらしい
私は矢羽音を三郎に飛ばした


(あれは三郎の友達ですね?名前は何と?)
(ボサボサ頭が竹谷八左ヱ衛門、まつげの長いのが久々知兵助、にこにこしてるのが尾浜勘衛門です)
(そう、ありがとう)


私は不破くんの顔のままにこりと笑った


「わ、久しぶりだな、3人に会うの」
「へ?」
「いやだな、僕のこと忘れちゃった?」


三者三様の表情
けれどその表情にある共通した感情は、驚愕と疑心
そんな三人に、不破くんの顔のままで私はふふと笑った


「うん、きちんと疑ってかかれていますね、いいことです」


そしてべりりと音を立てて皮をはがす
そして、別の皮をかぶった私はにこにこと笑って頭を下げた


「義弟がお世話になっていますね、私は鉢屋二葉、鉢屋三郎の義兄です」


お見知り置きを、と言えば上がる声に、私は大成功ですね、と呟いた







「で、どうして三郎のお兄さんがここに?」
「それはかくかくしかじかですよ」
「なるほど」


・・・おや?本当に通じたんですかね
大変だなぁ三郎、と言われながら、肩を叩かれる三郎を見て、私は通じたのか、と思いながら、久々知くんが持ってきてくれたお茶をすする


「三郎が元気そうで安心しましたよ。それに、良い友達に恵まれて・・・兄は嬉しく思いますよ」


そういって笑みを見せれば、4人は顔を見合わせて照れくさそうに笑った


「これで、いつ兄上が、私が、死んでも安泰ですね」
「兄上っ!?」


三郎が傷ついたような表情をした
・・・まぁ、いきなり兄がそんなこといったら驚きはするだろう
けれど


「三郎、忍びである以上、常に私たちは死と隣り合わせです。いつまでも、私たちが居ると、思ってはいけませんよ」


ぽすり、と三郎の頭に手を当てた


「強くなりなさい、三郎」





その強さは誰のために








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