立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、なんて 今日は課外授業だから、と言っていた伊作先輩は、思ったよりも早く私の前に訪れてきました ただし、いつもの深緑色の制服ではなくて、女物の小袖を着て、でしたけれど 「・・・えっと、これから、変装の・・・?」 「・・・うん、6年生でも変装はできないとダメだろうって」 もうやらないと思ってたのに・・・と肩を落とす伊作先輩に、私は苦笑を返しました 「それで、わざわざどうしたんですか?女装を見せに来たわけではないですよね?」 「あ、うん・・・朱、かんざしとか持ってない?持ってたら貸して欲しいんだけど・・・」 私は少し考えて、伊作先輩の着物と髪を見ました 薄い黄色に、桃色と朱色で描かれた花が可愛らしい小袖 ふわふわとした猫っ毛の茶色い髪 そしてほんわりとした感じの雰囲気 「・・・あ」 私は伊作先輩の手を引いて、くのたまの長屋へ足を進めます 「え、あの、朱?こっちってくのたま長屋じゃ・・・」 「はい、タカ丸さんのように上手くはありませんけど、折角なので髪を結おうかと思いまして・・・折角なので、化粧も一緒に」 「でも、僕男で・・・」 私は大丈夫ですよ、だって伊作先輩ですから、と言って、私の部屋に連れて行きました 部屋に着くと、私は伊作先輩に鏡の前に座ってもらって、私は赤いかんざしと櫛を取り出しました 横の髪を少し多くたらして、残りの髪を手早くかんざしで纏めてから、私は化粧箱を取り出しました 「動かないでくださいね、伊作先輩」 「う、うん・・・」 もとが可愛らしい伊作先輩なので、白粉は濃くならないように、頬紅もうっすらと乗せて控えめに 口紅は可愛らしさを引き出すために、濃くないものを そうして目をつぶる伊作先輩に、できましたよ、と声をかけました 恐る恐ると言った感じ目を開ける伊作先輩に、私はふわりと笑います 「・・・ええと、これって僕だよね?」 「はい、伊作先輩ですよ」 すごーい・・・といいながら鏡を見る伊作先輩 その姿は控えめで、けれど可愛らしい女性の姿 私の力作ですね、とおどけたように私が言うと、伊作先輩も本当に、と笑ってくれました 「行かないと、遅れてしまうんじゃないですか?」 「あ、そうだね・・・えっと・・・」 「門まで、一緒に行きませんか?」 え、と伊作先輩が声を上げました まさかそう来るとは思ってなかったようです 私はふふっと笑いながら、午前中は自習なんですよ、とこぼして そうなんだ、と伊作先輩もやわらかく私に笑いかけてくれました 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、なんて 戻 |