もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

きゅう






どたどたと慌てたような足音が聞こえました
ふとその音が聞こえる白い扉の向こうを見れば、釣られて伊作先輩もそちらに視線を向けます


「どうかした?朱」
「・・・足音、が・・・」


あー、うん、と伊作先輩は意味ありげに笑いをこぼして、私に寝てるといいよ、と声をかけてくれました
けれど、私はその足音の主が気になって、大丈夫ですから、と返して枕を背に当てながら扉を見ていることにしました


がらり、と大きな音を立てて開いた扉
その扉のあった場所には、うねる髪と長い睫を持った、幼馴染



「兵ちゃん・・・?」
「朱!」



兵ちゃんは私を見ると、すぐに駆け寄ってきて、私をきつく抱きしめました
兵ちゃんは少しだけ湿った声で、また合えてよかった、と再会を喜んでくれました
私はそんな兵ちゃんを抱きしめ返して、私も、会えてよかったです、と笑いをこぼしたのです




それは大切な幼馴染だから









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