なな 「朱・・・朱だよね、本当に・・・っ」 「伊作、先輩・・・っ」 伊作先輩は、泣いていました 私も、助かった安堵と、もう会えないと思っていた恋人に会えた嬉しさで涙を流していました 「朱・・・おかえり・・・っ」 「ただいま、戻りました・・・伊作先輩・・・っ」 私がそう返すと、伊作先輩は確かめるように私を抱き締めてくれました 満身創痍だった私を、受け止めてくれた伊作先輩が医務室へ運んでくれました 医務室の中にいた新野先生は私を見て目を丸くして驚いてから、怪我に気づいて手当をしてくれました 「無茶をしたでしょう、一ツ瀬さん・・・」 「・・・はい・・・、どう足掻いても、私の実力では相打ちしかできませんでしたから・・・」 布団に横たわった私に、新野先生はぽん、と頭に手を乗せて、宥めるように撫でてくれました そして新野先生は一言 「よく、頑張りましたね、」 そう呟くように言いました 私はその言葉にぽろりと涙が零れました 「ありがとう、ございます・・・っ」 横に着いてくれた伊作先輩は、何もいわずに手を握ってくれていました おかえり、愛しい人 → 戻 |