ろく 私たちにとって、一ツ瀬 朱と言うその名前は、ある意味で禁句であり、忘れることのできない名前だった ある人は彼女を助け 私たちは共犯者で ある人は彼女を愛し 彼は今も彼女を愛し続け ある人は彼女に負い目を感じ 彼らは思いを抱えたまま ある人は彼女への想いに気がついた 彼は遅すぎる己の自覚に後悔し 彼女は私たちのように転生の輪をくぐらずに、神隠しにあった 彼女の行方を知るものは誰としておらず、それこそ神のみぞ知る、と言ったところだった それだけに、その知らせは学園内を駆け巡り、女子棟では涙を流すものすら居たそうだ ― 一ツ瀬 朱が時を越えて落ちてきた ― 知らせは、そう伝えたのだ 知らせは千里をかけるように → 戻 |