もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

約束は次の春へと


へ、兵ちゃん・・・まって・・・!
「早く早く!」


山道を駆け上がる二人
頂上はそろそろで、けれどもう日が暮れる


兵ちゃん、もう日が暮れるよ・・・帰ろうよ・・・
「それじゃ意味がないんだよ、ほら、早くっ」


少年は少女の手を取ってまた走り出した
そうして山の頂上へとたどり着いた
少女は息も絶え絶えで、ついたと思うとその場に座り込みそうになっていた
少年はそんな少女の手を引いて、開けた先へと足を進めた


「ほら!」
・・・わぁ・・・っ!


視線の先には、暮れる日によって赤く染まる自分達の村で
小さく人が動き回るのが少しだけ見えた
けれどそれは一枚の絵のように見えたのだ


「これ見せたかったんだ、友達だから」
兵ちゃん・・・ありがとう・・・!


少年は笑うと、後ろを振り向いた


「あれ、桜なんだ。春になったら、花見に来よう、来年も、再来年も、ずっと一緒!」
うんっ・・・!


夕日色に染まるその頬は、二人ともなんだか夕日じゃない赤が混じっていた気がした



―――そして、時は流れる



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