もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ







闇が濃くなり、忍ぶ者たちの時間になりました

私と先輩お二人、そして今回協力してくれた綾部くん、伊賀崎くん、鉢屋くん、伊作先輩、立花先輩、潮江先輩、中在家先輩

そして、主役の"天女様"


私は天女様を揺らして起こしました
天女様はうっすらと目を開けて私をぼーっと見ました


「んぅ・・・朱ちゃん・・・?」
「はい、おはようございます」
「・・・まだ暗いし・・・私眠いよぉ・・・」


私はくすくすと笑いました
天女様は、今だこの状態がわかっていないようです


「天女様、あなたが眠くても、私は眠くありませんよ」
「うー・・・寝かせて・・・」


私と天女様のやり取りに笑い出したのは先輩お二人でした
その声に、なんだか嫌な予感を感じ取ったのか、天女様は目を開けました



「・・・え?」
「遅いお目覚めですね、おはようございます、と先ほど言ったのですけど・・・」
「朱ちゃん・・・?どういうこと?なんで喋れてて・・・なんで私外いるの・・・?」


私はいつものように天女様に笑いかけました
そうして楽しそうに話すのです


「どうしてだと思いますか?」
「わかんないよ・・・!わかんないから聞いてるのに・・・!」
「自覚がないというのも考え物だな」


このやり取りに痺れを切らしたのか、潮江先輩がつぶやきました
その言葉で自分が置かれている状況がよくないということが分かったようで、一気にかわいらしい天女様のお顔が青ざめていきます
その様子を、私たちは見つめていました


「やだ・・・っなんで、たすけて・・・!仙蔵くん!伊作くん!長次くん!やだ!助けて!」
「天女様のために特別に掘った蛸壷も用意したのに・・・入ってくれないんですか?」


綾部くんが残念そうにそういいました
そんな様子がおかしくて、私も先輩もくすくすと笑います
そして私は恐怖で動けない天女様をあの日と同じように、けれど反対の立場で抱きしめました
そうして耳元で囁きます


「ねぇ、動きを止められて、忍に囲まれて、刃物が迫るその恐怖、あなたには分かりますか?」
「ひっ・・・」


私は殺気を込めて笑いました
きっと私の表情は氷のように冷たい笑顔であることでしょう
私は彼女を綾部くんの掘ってくれた穴に落としました
既に殺気に当てられかわいらしいお顔は涙にぬれて、とても可愛そうな事になっていました
そうして一人一人、己の武器を、刃を下に向けて落としていきます

最後の一人が終わり、穴を覗けば血塗れのモノがただ在るのみ
私はいつもの笑みを浮かべて一言言いました


「 お や す み な さ い 」


そうして穴は埋められたのです
その事実を「なかったもの」とするために・・・






バッドエンドのお姫様








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