もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ







「・・・え?」
「だから、一ツ瀬が・・・」


―――何でかしらないけど、最近見つかった毒飲んだらしくて、この間保健室に居たんだよ―――

俺は信じられずに目を見開いた
朱なら、迂闊に毒なんて飲まないはずだし、あいつはそういうの気づきやすいはず
よっぽど油断・・・警戒する必要のない時以外、常にどこかしら緊張感を持ってるはずなのに・・・なぜ?

唖然としている俺を見て、ハチは言った


「兵助、お前さ・・・一ツ瀬のこと、好きじゃないのか?」
「え、朱はただの幼馴染で・・・」
「だって、兵助前はいつも一ツ瀬の話題が多かったじゃんか・・・」


俺も確かにかなさんのこと好きだけどさ、兵助の変わりっぷりは凄いと思う
ハチにそういわれて、俺は思い返した
今まで俺は・・・かなさんが落ちてくる前、俺はどうだったんだろう?


――― 兵 ち ゃ ん ―――


朱の声が聞こえた気がした
・・・俺は、かなさんが来てから朱の意志・・・言葉を、ちゃんと考えたか?
朱を、ちゃんと見てたか?

俺は胸を張って是と答えることができなかった

最後に話したのは、かなさんと委員会だから、と別れた時
でもそのとき俺は朱に何か言ったか?
かなさんには声をかけた、なら・・・朱は?

―――「かなさん、俺委員会なんでいきますね」
   「あ!ごめんね、つきあってくれてありがとっ!」 
―――

あの時、朱は笑って手を振っていた、その笑いは・・・
―――どことなく寂しそうだった


その前は?
・・・・俺が、かなさんが泣いていたのを、朱に聞いたとき・・・・?
あの時だって俺は、自分の言いたいことだけ言って、それで・・・?

―――どうして、朱は仲良くなれるって笑ったのに、どうしてかなさんはあんな目にあって、泣いてるんだ?
   朱、答えてくれよ
 ―――

あの時、朱は、どうして困ったように笑った?
そういえば、くのたまの子と付き合ってたやつらも、かなさんが好きだと言って・・・
付き合ってたやつらを取られたくのたまが、仲良くなるはずない・・・
だからかなさんの言葉にも、俺の言葉にも朱は困ってたのか・・・?


思い起こせば、気がつけば、絡まっていた糸はすべて解けた


「俺・・・」





遅すぎる後悔








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