昔語り 私は気がついたら泥だらけで道に座り込んでいました 今までどこに居たのか分からなくて、家への帰り方も、むしろ私に"帰る家"があるのかもわからなくて、凄く不安でぽろりと涙が零しました そんなときに拾ってくれたのがおじさんとおばさん・・・ううん、お父さんとお母さんだったのです 子どもが居なかったんだけど欲しかったから、うちの子にならない?と声をかけられて・・・ 今思えばきっと凄く稀で幸運なことでした 戦乱の世 きっと帰る場所などない子どもがたくさん居る時代 その中で、私は親を得、友達を得ました なぜか声が出ませんでしたが、お父さんもお母さんもはそれを嘆きもせず、きっといつか出るから、それまで楽しみにしておくと私に言ってくれました 友達になってくれた兵ちゃん・・・兵助は、私が言いたいことを分かってくれました よそ者の私を、温かく迎え入れてくれたこの村に、私は感謝してもしきれません けれど、その幸せな日々は、兵ちゃんが忍術学園に行くという出来事で閉ざされようとしました しかし、私を拾ってくれたお父さんもお母さんも、とても優しくて、泣かないように笑って送り出そうと、そう思っていた私に、忍術学園には女の子も入れるから、入らない?と提案してくれたのです 幼い私は一も二もなく頷きました それくらい、私の中で私を分かってくれる兵ちゃんの存在は大きかったのです そして私は兵ちゃんと同じように忍術学園に入学し、立派なくの一となるべく勉強を重ね、5年の歳月が流れたある日のこと・・・―――― 昔語り 戻 |