もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ




天女であるかなさんが、本当に害がない人間なのか
そう感じたのは、くのたま五年の一ツ瀬が、かなさんに抑えられ、それを振りきってかなさんを守り、死にかけたときだ
俺達があの場所に着いたとき、かなさんは何をしていたのか
敵を目の前にして、動きを止めるなど、殺せと言外に言っているようなものだ
一ツ瀬は悟られないようにしていたが、一瞬顔が強張っていた

忍者としての、あの決断力は見事なものだ
己の命をかえりみず対象者を守る
本来忍者の有るべき姿だった

・・・だが・・・
かなさんが廊下にでていたことがやはり腑に落ちない
危ないから、外にはでるなと言われていたはずだ
彼女は戦う術がないのだからな


「――文次郎!」


俺がかなさんを見る目を変えてから三日後
重傷の一ツ瀬が目が覚めたと、伊作に言われた




盲目的な魔法は溶けかける








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