よ 新野先生は言いました 彼女は運ばれてきたとき、ひどく危ない状態でした 寸でのところで心臓は回避していましたが、肺にクナイが突き刺さり、放っておけば死ぬであろう怪我でした―――― ―――――― 私の怪我は、新野先生によって傷を縫われ、一命を取り留めました けれど、私は一生残るであろう傷を負いました 傷は、別にかまわないのです 私はくの一となる身・・・色の忍務が出来なくなることは、くの一として良いことではありませんが・・・まあ、だからと言って、どなたかと結婚すると決まっているわけでもありませんから、気にすることはありません それよりも・・・――― 「あたし子供なんて生みたくなかったのよね、育てるの面倒だし」 「おかあ・・・さん・・・?」 「ねぇ、朱・・・・・・―― 死 ん で ち ょ う だ い」 強張って動けない体 目の前に迫る母 そして、今にも振り下ろされようとする刃物 思い出したくも有りませんでした 実の母に殺されそうになる己の記憶など・・・ 原因が分かってしまえば、自然と自分の声がなぜ出ないのかも分かるというものです ただの精神的な傷・・・今から思えばそんなことか、といえるほど小さな・・・けれど幼い私にとってはそれほど衝撃的だったということなのでしょうね ふっと自嘲して、先ほど目覚めたばかりで眠くもない目をつぶりました 時を経たずして現れたのは天女様と兵ちゃん 相変わらず仲がよろしいようで・・・ 天女様は・・・自分が無事ならそれでいいという方だったのでしょうか ・・・へいせいの方の考えは理解できませんね 「・・・朱ちゃん、起きないね」 「そうだな・・・」 私が投げ出していた手を天女様は握り締めると、少しして嗚咽が聞こえ始めました 彼女曰く、悪気なんてなかったのに、自分が私を殺そうとしたと言われていて辛い 私が起きて弁解してくれればきっとそんな誤解晴らしてくれるのに、と 私は彼女の保護者なのでしょうか? 彼女の行動によって死ぬか否かまで追い詰められたと言うのに、それが悪気がないという言葉だけで許される行為だと、そう分かっているのでしょうか・・・いえ、分かっていないのでしょうね 分かっていないからこそ、あのような行動が取れたのでしょうから・・・・ あぁ、私はどうすればよいのでしょう このまま兵ちゃんの恋を応援するために、嫌でも彼女の恋のご相談と言う名の愚痴に付き合う生活をするべきなのでしょうか それとも、予定のとおりに、くのたまの・・・――― 答えはすでに 決めてあるのです → 戻 |